「多民族共生教育フォーラム07東京」 すべての子どもたちに「教育への権利」を |
「市民提言」の発表も 「多民族共生教育フォーラム2007東京」(主催=同実行委)が4日、東京国際交流館(江東区)で開かれ、日本化各地にある朝鮮、韓国、ブラジル、ペルー、アメラジアスクールなど約30校の外国人学校関係者が集まった。 合言葉は「すべての子どもたちに『教育への権利』を」。 同フォーラムは、「大学入学資格問題」(03年)の経験から外国人学校の抱える共通の問題を解決していくには、外国人学校同士が連携し協力していくことが必要不可欠であるという共通の認識のもと、兵庫での初開催(05年)を皮切りに、愛知での開催(06年)を経て、今回首都東京での開催となった。 外国人・民族的マイノリティの子どもたちの学習権、および外国人・民族学校の制度的保障の実現を主題としたフォーラムでは、3年間の活動の「集大成」として、また切迫する諸問題に対する解決策として「外国人学校の制度的保障に関する市民提言・2007」(共同制作=同実行委、外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク)が発表された。 子どもたちの「居場所」をキーワードに進められたフォーラムではパネルディスカッション、各地の取り組み、外国人学校に通う子どもたちのメッセージが紹介されたほか、プレ・シンポジウム(3日、在日本韓国YMCA)、東京、埼玉、神奈川にある外国人学校への訪問(5日、写真は埼玉初中)も行われた。 教育の主体は子どもたち 学校関係者、弁護士、国会議員、人権団体や市民団体などから約300人が参加した「多民族共生教育フォーラム2007東京」(4日、東京国際交流館)。指摘されたのは「すべての子どもたちの学習権・教育への権利を十全に保障するために必要なのは、どのような教育制度が望ましいかという視点である」(基調報告)。フォーラムでは、日本の学校で居場所を探せず苦しむ外国籍の子どもたちがその辛い経験を切々と吐露した。また外国人学校への差別解消が強く訴えられた。 安心できる「居場所」を
フォーラムでは、張學錬弁護士(外国人学校ネット事務局)の開会のあいさつに続き、李春煕弁護士が基調報告を行った。 基調報告では「各種学校」「未認可校」「不就学」の問題と実情を踏まえ、外国人学校を制度的に保障することが早急な課題であることが確認された。 正規の学校として認められないがゆえに日本政府の助成金を受けられず、さらに南米系学校の多くは校地、校舎が自己所有でないなどの理由から各種学校の認可すら受けられずにいる。また、その差別は、学校給食や学校保健、学校保険などにもおよび、同じ地域に住む子どもたちが、同じ栄養状態、健康状態が保障されないばかりか、各種の奨学金制度の対象からも除外されるといった問題を引き起こしている。 さらに、1990年代から増え続けている南米出身の子どもたちが不就学に至る過程には、通っていた日本の公立学校でいじめを受けたことや、言葉、生活習慣の違い、日本語を話せず友人や教員とうまくコミュニケーションが取れない(おもに言語の問題だが、日本語が流ちょうに話せないことのほか、流ちょうすぎる英語も、すれ違うコミュニケーションの「原因」になるという)といった問題が根底にある。
日本学校に居場所を探せず、かといって金銭的な問題から外国人学校にも通えない子どもたち。フォーラムではまさに子どもたちの安心できる「居場所」が制度上の不備で奪われ、学校教育から排除され、「教育への権利」が失われている実情が強調浮き彫りにされた。 「結局、どこの国の人なの? と言われた。人として扱われるためには痩せなければならなかった」「ある日、クラスの友だちのゲームがなくなった。真っ先に疑われたのは外国人である自分だった」「日本学校に通っても、それはそれで楽しかったかもしれない。でも今は自分の国のことを知ることができて本当に良かったと思う」(外国人学校に通う生徒たちの発言から) 「運動場明け渡し裁判」(原告=東大阪市、被告=大阪朝鮮学園)の行われている大阪朝鮮高級学校の李行洙さんは、「運動場には夢と希望、汗と涙が染み込んでいる。運動場が奪われれば、運動会もクラブ活動もできなくなり、学校生活ができなくなってしまう」と訴えながら、学校に寄せられる多くの応援メッセージこそが、日本のみなさんの思いだと信じていると話した。 根本的解決に向けて 続いて「多民族・多文化教育へのロードマップ−外国人学校の制度的保障」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。パネラーとして、水岡俊一参議院議員(民主党)、山下栄一参議院議員(公明党)、春原直美さん(長野県国際交流推進協会)、田中宏さん(龍谷大学教授)、阿部浩己さん(神奈川大学法科大学院教授、フォーラム実行委員長)が出演、丹羽雅雄弁護士がコーディネーターを務めた。 外国人学校の制度的保障という点では、国政を司る国会議員の発言に注目が集まった。 水岡議員は根本的な問題の解決に向けては、教育基本法の改正と政策運営上の工夫が必要であり、国と地方公共団体のレベルでの取り組みが不可欠だと語った。 また、山下議員は人と人とのつながりを強調しながら、超党派での議員連盟の立ち上げを約束、文科省の担当者とともに外国人学校を訪問すると述べた。 「『外国人の学校』は『外国人の問題』ではある。しかし『外国人だけの問題』ではない」 阿部教授は「中長期的に考えた場合、この問題は日本社会に直接跳ね返ってくる問題だ」と指摘しながら、「多民族共生の制度的推進は日本社会を豊かで寛容な社会に導く」と主張した。 緊急に取り組むべき課題 フォーラムでは「外国人学校の制度的保障に関する市民提言・2007」が発表された。 日本には朝鮮学校、中華学校、韓国学園、ブラジル、ペルー学校などがあり、外国人学校の数は210を超えている。しかし、多様性を尊重し、子どもたちのアイデンティティを確立するための日本政府による教育制度は整えられていない。 「市民提言」は、このような状況に対して「国連人権理事会の一員となった日本は、率先してその義務を果たさなければならない」と指摘し、「多民族・多文化共生教育」の展開は、国籍、民族、人種を問わず日本社会を構成するすべての人々、すべての子どもたちに、複数の豊かな文化をもたらし、偏見と憎悪ではない、共生と平和を希求する新たな社会観、世界観をもたらすに違いないと指摘した。 そのうえで「外国人学校振興法の制定」、政府および関係機関が責任主体として緊急に取り組むべき課題として、外国人・民族的マイノリティの子どもの実態調査、各種学校となっている朝鮮、中華、韓国学校への私学助成など11項目が提案された。 外国人学校の中では率先して運動を展開して権利を獲得してきた朝鮮学校だが、制度上の差別は他の外国人学校同様で、苦しい運営状況に変わりはない。 それでも、フォーラムに参加した西東京朝鮮第1初中級学校の愼基成校長は、外国籍の子どもの学習権が侵害されている問題が全般的に議論されたほか、外国人学校間の団結、情報交換の場が持たれたことに大きな意義を感じるとしながら、「苦しい立場に置かれていることに変わりはないが、朝鮮学校が他の外国人学校の『モデルケース』として、イニシアチブをとって前進していかなければならい。60年という歳月が培った経験と人材が民族教育にはある。誇りと自負を持って、さらなる権利拡充のために主導的に取り組んでいきたい」と力強く語っていた。(鄭尚丘記者) [朝鮮新報 2007.11.12] |