朝鮮学校の国語教育
「民族教育の優越性」−ひんぱんに聴く言葉だが、最近の取材であらためて実感させられた。ある朝鮮学校附属の幼稚班の取材で衝撃を受けた。「朝鮮新報社の記者先生がいらっしゃいました」と教員が朝鮮語で紹介すると、園児たちは「アンニョンハセヨ」と。続けて「朝鮮新報って何?」「先生なのですか?」と園児たちが朝鮮語で質問しだしたのだ。「よろしくお願いします」と、返したあいさつがあまりにぎこちなく恥ずかしかった。
この幼稚班では教員から日本語を話すことはほとんどなかった。朝鮮語に続けて日本語を話すということもない。
教員たちは園児たちの会話能力の高さを「普通」だという。大切なのは、周りの大人や上級生が意識的に朝鮮語を使い、毎日繰り返す行動と言葉を結び付けてあげること。授業やお遊戯が朝鮮語で行われることは決定的だ。
このように朝鮮学校における一般的な言語教育(習得)法を「イマージョン教育」(没入法)というそうだ。つまり、当該言語の環境下で他教科を学び生活するなどして言語を習得させる方法だ。
「イマージョン教育」は1960年代にカナダで始まったとされている。だが、それよりも以前から朝鮮学校では自然な形で行われてきた。
朝鮮学校で調査研究したある日本の大学教授は、「大学教育までイマージョンを継続し、2世3世教員を輩出して全国に供給している朝鮮学校の実践は世界的にも貴重な成功例のひとつ。バイリンガル教育の研究者にとって知識の宝庫」と高く評価している。(泰)
[朝鮮新報 2007.7.9]