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東京で祐天寺の遺骨問題を検証する緊急集会 「日本政府は誠実な対応を」

 緊急集会「祐天寺の遺骨問題を検証する」(主催=朝鮮人強制連行真相調査団、共催=在日本朝鮮仏教徒協会、東京朝鮮人強制連行真相調査団)が9日、東京の日本教育会館で行われた。現在も南朝鮮で暮らしている金相鳳さん(85)の家族に、金さんの「遺骨」が祐天寺に安置されていることを示す名簿が渡されたことを受けて開かれた。集会には、金相鳳さんをはじめ、真相調査団のメンバーと同胞、日本市民らが多数参加した。

「死んだと言ってるようなもの」

集会には多くの同胞、日本市民が参加した

 「生きている人間を、死んだと言っているようなものだ。70年も前のことで、思い出したくもないことなのに、『遺骨』だなんだと言われて、何を言えばいいのかもわからない。あまりにもむごすぎる」

 金相鳳さんはこのように述べながら、日本政府の遺骨調査のずさんさに怒りを露にした。

 旧日本軍の軍属として徴兵された金相鳳さんは、45年4月、沖縄で米軍の捕虜となり、ハワイの収容施設に送られたあと、同年12月に故郷の慶尚北道に帰り、現在に至っている。

 緊急集会に先立ち、遺骨調査の抜本的な改善などを求める安倍首相あての要望書を内閣府に提出する際、金相鳳さんは孫に代筆してもらった手紙も手渡した。

 金相鳳さんは手紙で、「過去の過ちを掘り起こすつもりはない。でも、若かりし頃、惨めに連行され労働と捕虜生活に費やされた時間が恨めしい。しかし、生きている人間の生死如何を無視し、遺骨を発見したと誤報を記録、通報するという不透明な真相究明の過程と韓国に対する日本政府の態度、やり方はもっと恨めしい」とやりきれない心情を吐露した。

日本政府に誠実な対応を求める金相鳳さん

 集会では、金相鳳さんはもちろん、朝鮮人犠牲者の遺骨問題で不誠実な対応を取り続ける日本政府に対する非難が相次いだ。

 総連中央の高徳羽副議長兼同胞生活局長は、「日本政府の姿勢は、犠牲者、遺族不在の『遺骨調査』を貫いており、政治決着を目論んでいるのは明らかだ。さらに重大なことは南朝鮮と日本の間では遺骨の調査と返還で合意しているが、朝鮮は除外されているということだ。この集会を、日本政府がすべての関連情報を正確に公開して事実関係を調査すると共に、日本人犠牲者と朝鮮人犠牲者に対する差別を是正するなど、過去の過ちに対する姿勢を改め、謝罪と補償をするきっかけにしよう」と訴えた。

 真相調査団日本人側共同代表の寺尾光身・名古屋工業大学名誉教授は、「政府の不誠実な対応を日本人として恥ずかしく思う。生きている人の『遺骨』があるというばかりか、今になってそれを遺族に知らせるということが許されることなのか。戦時に数多くの朝鮮人を強制的に連行し犠牲を強いたにもかかわらず、戦後処理はまったくいい加減だ。こんな国のどこが『美しい国』なのか?

 今後も、地道に事実を掘り起こし、日本市民ひいては全世界に知らせていくことで日本政府の行動を促そう」と締めくくった。

 集会に先立ち、記者会見が行われたほか、金相鳳さんと真相調査団の代表らは内閣府のほかにも厚生労働省に赴き、金相鳳さんの「遺骨」問題に関する経緯の説明などを求めたが、厚労省側は「会えない旨をすでに伝えてある」との一点張りで、担当者との面会を拒否した。

 これまで厚労省は、遺骨問題に関して担当者が応対していたが、面会すら拒否したのは今回が初めて。

 一行は、「加害者が被害者に対する説明はおろか面会すらも拒否するというのはどういうことか」と憤りを隠さなかった。

「実骨」はわずか1割

 一方、緊急集会では真相調査団が新たに発見した資料を公開した。

 資料は、戦後の日本人引き揚げなどを担当していた外務省アジア局第5課が1954年に作成した「朝鮮出身戦没者に関する件」と厚生労働省引揚援護局長から外務省アジア局長あてに1955年に送られた「朝鮮及び台湾出身戦没者の遺骨送還について」、外務省アジア局第1課が1956年に作成した「朝鮮人戦没者遺骨問題に関する件」の3点。

 これらの資料によると、旧海軍での朝鮮半島出身の死者1万2761人のうち遺骨9855人分が1948年までに返還され、2906人分は返還されずに広島県呉市に一時保管された。このうち実際に遺骨があったことを示す「実骨」は240人分と記されており、全体のわずか1割程度だった。

 資料について説明した真相調査団の洪祥進事務局長は、「まず、ほとんどが遺骨ではなく、遺髪や爪、石だったことが大きな問題だ。次に、とりあえず『遺骨』を送り返し、後は先方任せという日本政府の姿勢に問題がある」と述べながら、遺骨問題に関する北南朝鮮の論調を紹介。遺骨調査の全面的な見直しと死亡者総数の発表、遺骨に対するDNA鑑定の実施などとともに遺族に対する謝罪と補償を一日も早く実現するべきだと強調した。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2007.3.16]