女性同盟ハイキング 100回目をめざして |
第88回 鎌倉「観月堂」を訪ねて
昨年12月、鎌倉へ紅葉狩りに行ってきた。 発足10周年を迎えた女性同盟横浜支部主催のハイキングで、毎月楽しみな行事のひとつである。 12月最初の暖かい土曜日、晴天に恵まれ12人が参加した。 昼食は各自が持ち寄る。豚足をアメ色に煮て熱いままポットに入れて持ってきたり、逆にイカフェ(さしみ)を保冷剤でくるんできて、現場でウリ式酢味噌で和えたり、キムチはみなが持ち寄るので各家庭ごと何種類もの味付けで出てくる。まるでチャンチのようにさまざまな料理が並び、互いに分け合って食べ、ハイキングというよりピクニックだ。 この10年の間にいろいろな所へ行った。神奈川県内や近郊の有名なハイキングコースはほぼ踏破し、わが民族と縁のある所は、積極的に取り入れコースを組んだ。 鎌倉は近い観光地ということもあり、少しずつコースを変え、毎年1〜2回はスケジュールに入れてきた。 そして今回は、紅葉の名所数カ所を歩き、高徳院をコースの最後とした。 一般には大仏寺、さらに略して大仏とのみ呼ばれるこの寺は、鎌倉観光の定番であり、陳腐ですらあるかもしれない。
この日もカップルや家族連れ、バスツアーの団体、欧米人グループ、とにかくたいへんな混雑で、大仏の胎内拝観には長い行列までできていた。 ところが、この寺の回廊の裏に小さなお堂がひっそりとたたずんでいることを知る人は、意外に少ない。 このお堂は朝鮮王朝時代のわが国の宮殿の一部で、15世紀頃の貴重な建築物で「観月堂」と言う。 大正時代に日本に運ばれ、しばらく東京に置かれたのち、戦後高徳院に寄贈されて昭和27年頃、今の場所に移築されたそうだ。しかし、案内札や説明表示板などいっさいない。 堂の内部には、観音像が祀られ、近頃鎌倉三十三観音に入ったため、柱の横に二十三番札所と記してある。時たま若い女性の姿を見かけることもあるが、観音参りをしているのであって、お堂の名もいきさつも知らないのである。もちろん中には謂われを知って尋ねてくる人もいるだろう。しかし多くの観光客は、日本人もウリサラムも大仏裏にあるお堂の存在すら知らないし、偶然入り込んできても何の表示もないのだからわかるはずもない。すぐ横にある与謝野晶子の歌碑は、寺の入口からちゃんと案内表示があるのにである。 私自身ちょっとしたきっかけで知り調べてから、最近は遠方の友人などが来ると案内、説明しているが、地元とはいえ昔は全然知らないことであった。今回ハイキング参加者の中にも「大仏様なんて何回も来てるし、今さら寺見物なんて」と遠慮している人もいたが、実は朝鮮ゆかりのお堂があると知るや、みな真摯な顔つきになりじっくり建物全体や屋根瓦、軒瓦、壁などを見ていた。 歴史上、文化芸術などで朝鮮の影響を受けたり、つながりの深い場所は日本に多数あり、かなり知られていることも多い。学者、研究者や関係者は当然知っている事柄である。しかし日本では最近、朝鮮との関わりを過小評価し、影響を否定したり、はなはだしくは意図的に隠そうとしている傾向が見えるのはなぜだろう。あらゆる分野で知ろうとする意欲と、知らせる努力、どちらも大切なことではないだろうか。 半日歩き回って少々疲れはしたが、有意義でさわやかな時を過ごせたと感じる。健康的なだけでなくプラスアルファの魅力と楽しみも大きいこの女性同盟ハイキング、今年は100回を迎える予定だ。 みんなでしっかりがんばって続けようと思う。ちなみに昨年末は88回目であった。年明けに北原白秋ゆかりの城ヶ島を訪れる予定である。(金幸枝、画家) 2007年ハイキング年間予定表 89回 1月23日(土) 城ケ島 90回 2月 3 日(土) 称名寺市民の森 91回 3月 3 日(土) 田浦 梅の里 92回 4月 7 日(土) 根岸森林公園桜花見 93回 5月 5 日(土) 葉山花の木公園のつつじ 94回 6月 2 日(土) 横浜市児童植物園 95回 7月 7 日(土) 藤沢森林公園 96回 8月 4 日(土) 座間のひまわり 97回 9月 1 日(土) 日向薬師の彼岸花 98回 10月6日(土) 旧古川庭園と巣鴨 99回 11月3日(土) 鷹鳥山 100回 12月1日(土) 山下公園 イチョウ並木 問い合わせ=女性同盟横浜支部 TEL 045・241・2233 [朝鮮新報 2007.1.23] |