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コリアンタウン

 生野区には約3万人のコリアンが住んでいる。南北に流れる平野運河にクロスするように朝鮮市場、コリアンタウンが東西に通りをなしている。通りを歩くと日本語よりも朝鮮語、中でも済州島の方言が飛び交う。蒸し豚の匂い、ニンニク、唐辛子、チヂミを焼くゴマ油の匂いが複雑にからまって、独特の匂いを放つ。馴れるというのは恐ろしい。深呼吸するのである。ああここへきたというか、なぜかホッとするから。

 行きつけの喫茶店でモーニングコーヒーを飲む。ブラックで2杯。新聞は日刊スポーツからゆっくり読む。コラムがいつもおもしろい。阪神が勝った日は1面から。負けた日は、後ろから読む。野球欄は飛ばす。

 それはそれこれはこれと網をうつ/ゆっくりでいいと言いつつもやしの根/一日や時間が過ぎる葉音かな/それからとポキッと鳴らす指の音

 街角で甘鯛を干しているおばあさんの顔がいい。老いた女の顔である。知恵深い瞳である。どこかで見たインディオの老いた女の顔と似ている。二人の共通点は、精一杯生きたという自負とあきらめと、童女のようなやさしさ。写真を撮ろうと思っていたが、病気でもう店には出てこられないとのこと、残念である。

 仕入れを終えた、山積みの自転車をこいで、さあ店へと、いよいよ仕事のはじまりだ。この街は生活に必要なものはすべて手近にある。夜、店を閉め、小腹がすくと朝までやっているうどん屋さんに行く。

 心走るスッテンコロリ打撲せり/やれやれと月澄んでおり露地の上(作家 高貞子 大阪府在住)

[朝鮮新報 2006.7.10]