「美しい国へ」?−「格好いい言葉だけ…」 |
「初の戦後生まれ」のキャッチフレーズの安倍晋三首相が誕生した。「好戦的で話しベタ」の印象が強い。それは誰かの書いたシナリオ通りにしゃべろうとするからではないか。 それにしても、この内閣は酷すぎる。「改憲」と「教育基本法」の改悪を前面に掲げての出帆、右を見ても左を見ても、日本の侵略戦争や植民地支配の過去を真っ向から否定する面々ばかり。率直に反省することを「自虐史観」などと罵声を浴びせ、戦争放棄をうたった「9条」を打ち捨て、国家体制そのものを戦争ができる国へと一挙に舵を切ろうとしている。 安倍首相は02年、拉致問題を千載一遇の好機にとらえて、「戦術核や大陸間弾道弾の保有は憲法違反ではない」と言い放ったり、北のミサイル発射訓練に際しては、最も強硬に制裁措置を主張した張本人である。その好戦性に強い影響を及ぼしたのが、外祖父の岸元首相や吉田松陰であると言われている。岸からは徹底した親米DNAを、松陰からは「神功」「秀吉」を超えよ、という朝鮮侵略観を受け継いだのであろう。 安倍首相の口癖は「美しい国を守る」とか、「自由、民主主義、人権うんぬん」である。作家の半藤一利さんが「この方には格好いい言葉だけでほかに何もない」(毎日新聞9月7日付)と、正鵠を射た批判をしているが、全く同感である。 かつて、日本は19世紀末から20世紀の半ばまで、アジア、太平洋全域で野蛮極まりない侵略戦争を行った。その犠牲者は2000万人を超え、肉親を失った遺族の数は、天文学的な数字に上る。 戦争被害者たちの「怒り、悲しみ、恨の記憶」は、薄っぺらな言葉一つで消せるものではない。(粉) [朝鮮新報 2006.10.3] |