国体出場の夢−王さん苦しめた「国籍」の壁越えて |
いま闘病中のソフトバンクの王貞治監督がこのニュースを知ったらさぞ、喜んでくれると思う。 朝鮮学校選手たちの国体出場のニュースである。王さんは92年、高野連が外国人学校にも扉を開いた時、本紙記者に「今度、野球で出られるようになったんだってね、本当によかった。おめでとう」とお祝いのコメントをくれた。 王さんが野球を始めたのは小学生の頃。戦後の焼け跡の中で「布を丸めて作ったボールと丸太を削っただけのバットで遊んだ」という。今夏、念願の全国制覇を果した有力校の早実高校に入学した王さんは、当時、甲子園めざして泥まみれの練習の日々を送っていた。1年からレギュラーに抜擢され、ピッチャーで4番、甲子園には4回出場して、2年生の春には全国優勝した卓越した戦績。しかし、その王さんにも破れなかったのが国籍の壁。3年間を通じて一度も国体に出場できなかった。王さんはその時の心境を本紙記者に「僕の目標はあくまで甲子園だったのでショックは少なかったが、それでも『他の仲間が出られて、なぜ、僕だけが…』と子ども心に強く疑問に残った」と語った。 今、「世界の王」と尊称される王さんは、少年時代に受けた悔しさをバネに、過酷な試練に打ち勝ちながら、自らの人生を花開かせたのだ。 今月末から開かれる兵庫国体には朝鮮学校から6種目9人の選手と2人の監督が初出場する。このニュースは地元の新聞、テレビでも大きく扱われ、歓迎されている。 朝鮮学校代表としての名誉を担い、地域代表としての熱い期待がかかる。この夢の実現のために、王さんはじめ、スポーツ関係者たちが傾けた長年の尽力に心から感謝したい。(粉) [朝鮮新報 2006.9.22] |