嫌がらせ−「仕返し主義」では解決しない |
ミサイル問題に端を発した朝鮮学校生徒への暴行、暴言、嫌がらせがひん発している。通学距離が長い子どもと親にとっては、お互いの顔を見るまでは、安心できない緊張の日々が続くだろう。 核疑惑、拉致問題など朝、日関係や朝米関係が激化するたびに、日本社会では少数者である在日同胞や子ども、少女を標的にするひ劣な事件が集中する。 いじめとは結局、「お前はわれわれではない」という主張にはじまる現象だ。抑圧され、欲求不満のかたまりになった人々が、在日に牙を向ける図式。「他人の不幸は蜜の味」(日本)、「いとこが土地を買うと、腹が痛い」(朝鮮)と言うことわざもある。このような人間の低劣な属性に歯止めをかけるには、社会が一体となって、差別や排外主義に対して断固として闘う姿勢が求められる。しかし、日本では政治家やメディアが反朝鮮感情を煽り、増長させるばかりだ。 誰かが憎いといって仕返しすることをフランス語で「ミメティスム」(仕返し主義)と言う。 暴力や憎しみの連鎖を断ち切るために、哲学の見地からその概念を提起したアラン・ブロッサ・パリ第8大学教授によれば、「西欧では二度の大戦での壊滅的な災禍が、ミメティスムでは何も解決しないという暗黙の了解を人々の間に生み出した」と指摘しながら、「仕返ししても何も解決しない。相手の立場を理解しようとする普通の人たちの開かれた態度が、西欧に暗黙の了解を成立させた」(朝日新聞2月20日付)と強調する。 そのうえで同氏は「二度経験しないとわからないものでしょうか。日本は、もう一度の経験が必要なのですか…。空恐ろしいことです」と重い問いを投げかけている。(粉) [朝鮮新報 2006.7.22] |