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新人作家のこだわり−「朝鮮語で考え、書きたい」

 先日、「若きアーティストたち」で紹介された新人作家の趙奈美さんは、「常に朝鮮語で考え、書きたい」というのを座右の銘にしている。

 在日3世、幼稚班から大学まで体系的な民族教育を受けてきた。でも、家庭ではもっぱら日本語が「共用語」となっている。

 初級部1年生から中級部3年生まで朝鮮語で日記を書くのを日課にしていた。高級部のときは寄宿舎の舎監教員と交換日記をしていたという。「初級部の頃は担任の先生がつけてくれる『星』が欲しくて。先生のコメントもいつも楽しみにしていた。1、2年のときはまちがった字を10回ずつ書かされたけど、おかげで綴りをまちがえることもなくなった」

 中級部の担任も日記の指導をていねいにしてくれた。この頃から趙さんは、わからない言葉を辞書で引きながら朝鮮語で日記をつけるようになる。

 高1のとき、母親の祖国訪問をきっかけに、朝鮮にいる同い年のいとこと文通をすることになった。いとこは外大の日本語科を目指していたこともあり、趙さんは朝鮮語で、いとこは日本語で手紙を書いた。この文通は大学卒業まで続いたという。「互いにアドバイスを繰り返して、いまでは直すところもなくなった」。

 昨年、趙さんの短編小説が1位に選ばれて、朝鮮の親せきたちも喜んでくれた。

 「小説の中にある、バイトでバナナの皮をむいて海外旅行費を捻出したという部分に『涙が出た』と言って、いとこの夫に『バナナ娘』というあだ名をつけられた」と趙さんは笑う。

 朝鮮語で小説を書くのは難しい。でも、趙さんはあえて「朝鮮語で考え、書きたい」と考えている。(潤)

[朝鮮新報 2006.7.10]