「悲惨な苦しみ」−「病者の人権」理念の確立を |
21、22日の両日、東京で開かれたハンセン病学会のシンポジウムに、不二出版から刊行されている「近現代日本ハンセン病問題資料集成」の戦前編(全8巻)、戦後編(全10巻)、補巻(6〜9)の編集・解説を担当した日本近現代史研究者の藤野豊・富山国際大学助教授がコーディネーターとして、出席していた。 この資料集は、全部でA4版、B5判8500ページにわたるぼう大なもの。 藤野さんが編者として、この大著の中で繰り返して語るのは、人間の尊厳を求めてやまなかった病者への共感であり、現代日本に「病者の人権」理念を確立させたいという強い願いである。 19世紀以来、日本では治療よりも「文明国の恥」としてひたすら強制隔離されたハンセン病患者たち。その間、患者たちは、故郷や職場を追われ、名前を奪われ、残された家族もまた差別にさらされた。 そして、戦後もその悲惨な境遇に何ら変化はなかった。強制隔離が続けられた上に、優生保護法のもとで、断種、中絶までもが合法化され、社会の偏見が正されることなく96年のらい予防法廃止まで至った。 また、日本の植民地下でのハンセン病隔離政策は、より残忍な様相を呈し、朝鮮人患者らは病苦と民族差別という地獄の苦しみを背負わされた。患者たちは、過酷な労働と栄養不足のため、凍死、餓死、病死に追いやられ、絶望して自殺する人もあとを絶たなかった。 藤野さんは、今回のシンポで「もし、日本の侵略がなかったら、朝鮮はじめ旧植民地下の患者たちの悲惨な苦しみはなかった。日本政府はこのことに心からの謝罪と償いを果たし、再びこのような過ちを繰り返してはならない」と訴えていた。(粉) [朝鮮新報 2006.1.29] |