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本紙に連載した浅野健一・同志社大学教授のW杯観戦レポート。その2回目で浅野教授は、国際サッカー連盟(FIFA)が今大会で人種差別反対キャンペーンを展開したことについて書いている。準々決勝の2日間は「反人種差別の日」と指定され、試合前に両チームのキャプテンが、「人種差別は卑劣だ」などと声明文を読み上げた。競技場のセンターサークルには「人種差別にノーと言おう 今は友だちをつくる時」と書かれたシートも敷かれていた ▼仏代表主将のジダン選手が決勝戦で伊選手を頭突きし、退場処分を受けた問題が波紋を広げている。FIFAは20日に両選手を呼び聴聞会を開く予定で、それまで真相解明は待たれる。だが、ジダン選手のテレビインタビューなどを総合すると、頭突きの背景には深刻な人種差別発言があった模様だ ▼だとしたら、FIFAの努力も水泡に帰した感は否めない。実際、ドメネク仏監督は、「競技場にバスが着くと、猿の鳴き声でチームの黒人選手がののしられた」とAP通信に対して語っている。有色人種の多いチームを理由に決勝敗退を歓迎する仏右翼政党もあったほどだ ▼とはいえ、暴力という形での主張≠ヘ決して許されるものではない。「ジダン選手のふるまいを認めたら、街中がけんかだらけになってしまう」との声も聞かれる。ジダン選手自身も後で反省の弁を述べている ▼世界中を熱狂させたW杯は、何とも後味の悪い締めくくりとなってしまった。子どもたちの夢を壊さないためにも、今回の事件からくむべき教訓は少なくない。(聖) [朝鮮新報 2006.7.18] |