春・夏・秋・冬
桜が見頃を迎えている。自宅近くの公園では、気の早い人たちが花見を楽しんでいる光景を見かけるようになった。ビールやつまみを売るにわかづくりの屋台が所狭しと並ぶ。それはそれで季節の風物詩である
▼一方でここ数年、その公園には必ず人々に注意を促す看板が立てられるようになった。「花見は夜10時まで」。酔っ払って大きな声で歌ったり叫んだり、注意をされれば逆ギレする始末。そんなトラブルがここ数年絶えなかったからだ。あげくの果てには公園内の池に飛び込む酔客まで登場した。そうした状況については、テレビでも結構紹介されているのでおわかりの読者も少なくないだろう
▼しかし情けない。そうした看板で呼びかけなければならないほど、大人の常識がなくなってしまったのだろうか。何も「夜10時まで」と決められなくても、みなが自覚して動けばすむことではないだろうか
▼考えてみれば、これは常識をうんぬんする前に、思いやりの問題ではないかと思う。大きな声で叫んだり歌ったりすれば、それが近隣の住民にどれだけの迷惑になるのかを思いやる心。それがあれば、自ずと変わってくると思うのだが
▼駅構内のポスターにこんな文句を見つけた。「お酒じゃなくて桜に酔う」。花見が先かお酒が先か。もちろん「花より団子」もいいかもしれないし、花見を口実に親交を深める場である花見の席は、楽しく盛り上がるのも悪くない。それでも、「桜に酔う」花見も粋なのではないか。ほとりに咲く美しい桜を見ながら、そう思う今日この頃だ。(聖)
[朝鮮新報 2006.3.28]