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春・夏・秋・冬

 年末年始にかけて、読みかけのままだった「昭和史」を読み終えた。著者の半藤一利は「文芸春秋」などの編集長を歴任。日本の戦争史を中心に造詣が深い

▼この本がまとめられる契機になったのは「学校でほとんど習わなかった昭和史を手ほどき的な授業で教授してほしい」という若い編集者の説得によるものだったという。月に一回、戦後生まれの3人を相手にした講義が始まり、そこで語った内容が一冊になった

▼語りをそのまま収録したものだけに、平易で読み易い。天皇、軍部の言動など、それこそ日本の教科書には永遠に掲載されることがないようなものから、永井荷風ら戦争を批判的に見つめていた文学者たちの日記などを引用、並列。著者風に表現するなら、いかに「アホなことをしでかしたのか」を、満州侵略から中日戦争、第2次世界大戦、そして敗戦に至るまでダイジェスト的、かつ実証資料を合わせて掘り下げ日本の戦争の本質に言及している

▼興味深い叙述ばかりで読み出すと引き込まれてしまう。なかでも印象に残ったのが「むすびの章」の以下の一節だ。「よく『歴史に学べ』といわれます。(中略)ただしそれは、私たちが『それを正しく、きちんと学べば』という条件のもとです。その意志がなければ、歴史はほとんど何も語ってくれません」

▼言い尽くされてきたような指摘ではある。だが、公然たる歴史改ざん=教科書改悪、「心の問題」だとして侵略戦争の「博物館」、靖国参拝を繰り返す首相の行動などが日常的になっているこの社会では、普遍的な意味を持っている。(彦)

[朝鮮新報 2006.1.17]