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若きアーティストたち(42)

パーソナリティー・韓春日さん

「まだまだ夢追い人」と語る韓さん

 「自分の声が求められるところならどこへでも行きます」

 淀みのない澄んだ声。しかし細いとか甲高いというような風ではない。落ち着きがあり、まっすぐ芯が通っている。

 現在、毎週水曜の午後12時から2時までの2時間、福岡のコミュニティFMで番組を持っている。番組構成や選曲、ミキシング操作などすべてを一人で行うワンマン形式の番組だ。本名の「春日(チュニリ)」で活動している。

 「しゃべりの世界」へ飛び出して2年目。

 「聞いてくれる人に楽しい空間を提供したい。ほんのひとときでも幸せな気分になってほしい」と仕事に打ち込む。

 高校卒業後、福岡朝鮮歌舞団に歌手として6年間在籍した。初めて同胞の結婚式で司会を任されたとき、「『トンムに頼んでよかった』と感謝してもらえたことがきっかけ」となって、本格的に「しゃべり」を学び始めた。朝鮮語で話せること、舞台慣れしていることなど歌舞団で培ってきたすべてが評価を受け、「やっていける」という自信へつながった。

 溢れる熱意に呼応するように、最近いろんな仕事が舞い込むようになった。「自分のスタイルや信念を強く持っていないと潰れる。代わりはいくらでもいる」と痛感する毎日だ。そしていつも追求しているテーマは、「在日として生まれた自分にしかできないこと」。

現在週1回、2時間番組を担当している

 「在日の歴史は『怒り』の歴史。国を奪われ、言葉を奪われ常に闘い続けてきた。これを忘れたら私たちはきっとダメになる」と静かに語る。

 「私自身の印象が在日の印象」として受け止められる、と常に感じている。目に見えない人たちに向けて話すプレッシャーを克服し、自身の「在日魂」を確固なものにするため、歴史や言葉を改めて学んでいる。

 「一世の語りに人々が涙するのは、伝えたい思いが心の底から湧き出ているから。技術だけの話し手にはなりたくない。素朴でも心の言葉を伝えたい」とその目は真剣だ。

 先日、自身の可能性を試したくて、福岡天神FMのパーソナリティーオーディションにデモテープを送った。天神は九州最大の繁華街。オーディションに通過すれば、今までよりもっとたくさんの人に「楽しい空間」を提供できるようになる。

 朝鮮語と日本語を活かしながら、在日である自身のこと、しゃべることへの思いを込めたデモテープはプロデューサーの目に留まり、来年から番組を持つようになった。

 「自分の声でみんなにパワーを与えていきたい。今後、在日をピックアップしたり、在日のコミュニティーを大切にできる番組作りをしていきたい」と話す。

 人とのふれあいや小さな幸せ、自分をサポートしてくれている家族や友達、声を通して出会っているすべての人々に感謝する気持ちを持ち続けている。

 「もっとたくさんの人に自分の声を届けていきたいという目標に向かって、今はまっしぐら。まだまだこれから。夢追い人かな」と、はにかみながらも、その目はまっすぐだった。(呉陽希記者)

※1980年生まれ。北九州朝鮮初中級学校、九州朝鮮高級学校卒業。福岡朝鮮歌舞団で、歌手、司会者として6年間活動し、05年に歌舞団を退団。06年から、福岡のFM局でパーソナリティーとして活動。現在ラジオパーソナリティーの傍ら、イベントや舞台、結婚式のMCも務める。

[朝鮮新報 2006.10.17]