〈担当記者座談会 06年朝鮮半島情勢を振り返るA〉 北南関係 |
活発な民間交流
A 昨年、北南関係は「第2の6.15」と呼ばれる新たな発展段階に入った。その流れを受け継ぎ今年も和解と交流、協力がさまざまな分野で進められた。 C 昨年、常設の統一運動連帯機構として「6.15共同宣言実践民族共同委員会」が誕生したことが大きい。一段階高い水準で統一運動を繰り広げられる土台が構築された。 民間レベルでは、労働者、農民、女性、青年学生、宗教団体をはじめ各部門別の会議、交流会などが盛んに行われた。また、慶尚南道や京畿道など地方自治体が独自に代表団を派遣するなど道単位での交流も活発だ。6月には、北南、海外の民間代表団と北南当局代表団が参加する「6.15共同宣言発表6周年記念民族統一大祝典」が光州で盛大に行われた。例を挙げればきりがない。 B 6月に済州道で開かれた経済協力推進委員会では、「軽工業および地下資源開発、協力に関する合意書」が採択され、「双方が所有する資源、技術などを結合させた新たな方式の経済協力」のための具体的な道筋がつけられた。すでに黄海南道の鼎村天然黒鉛鉱山では、鉱業分野での初の北南協力が始まっている。 D 離散家族の再会も2回実現した。6月末の特別再会の場で、横田めぐみさんの夫の金英男さんが南の家族と28年ぶりに再会した場面は印象深かった。 B 北側は年の初めから3紙共同社説や、朝鮮政府、政党、団体合同会議(1月26日)を通じて、▼「3大愛国運動」の展開▼6月15日を「わが民族同士の日」として記念▼民族統一大祝典の開催を呼びかけるなど、昨年に引き続き今年も北南関係発展に積極的に取り組んでいく意志を明らかにしていた。 北南の隔たり D 順調だった北南関係だが、なぜストップしたのか。 A 表面的には北側のミサイル発射訓練、その後の核実験をきっかけにした朝鮮半島情勢の緊張激化にあるが、より本質的には北南関係発展に対する両者の観点の相違にあるといえる。 B 北側は、冷戦時代の遺物をなくすなど政治問題が解決されなければ、経済交流を含めていつ対決の時代に戻るかわからないという立場だ。そのため、昨年9月の閣僚級会談時から、「対決の制度的障害の除去」という北南関係発展における「根本問題」の解決を一貫して主張してきた。具体的には双方の体制や尊厳の尊重、米国との合同軍事演習の中止、「国家保安法」の廃止などだ。 C 閣僚級会談は今年2回開かれた。経済や人道問題の分野ではさまざまな合意がなされたが、こと「根本問題」に関しては、昨年12月の第17回会談から目立った進展はなかった。 19回会談では、「根本問題」解決へ向けた論議を求める北側と、ミサイル、核のみを話し合おうとする南側の主張が真っ向から対立し、次回日程も決められないまま決裂した。 B 現在の北南関係に対する北側の認識はシビアだ。 安京浩・祖国平和統一委員会書記局長は、光州民族統一大会での演説で、現在の北南関係を「いつ対決の過去へ戻るかもしれない、非常に不安定かつ初歩的な状態の共存関係」と位置付けた。 C 現場で取材したが、6.15共同宣言発表後6年間の成果を強調した南側の白楽晴委員長の演説とは対照的に、安書記局長は儀礼的な前置きもほとんど省略して北南関係の現状と問題点を冷徹に指摘していた。結果的に北と南で発言上の役割分担がうまくなされたといった見方もあったが、現在の北南関係を一定評価している南側で安書記局長の発言が大きな波紋を起こしたことを覚えている。 A 北南双方には、統一問題や情勢に対する認識に大きな隔たりがあることは確かだ。安書記局長の分析は、後に北南関係が悪化したことで皮肉にもその正しさが証明されてしまった。 C 列車試験運行の中止や、釜山閣僚級会談の決裂、南側と米国の相次ぐ合同軍事演習などがそうだ。米国の横槍によって金剛山観光や開城工業団地事業も危機に瀕している。 米国は6者会談を通じて9.19共同声明が発表されたにもかかわらず、金融制裁やPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)の実施など北に対する敵対政策をエスカレートさせてきた。「北南関係の停滞」が、これらの流れを阻止できなかった一因となったことは否定できない。 対決の制度的障壁除去を A 北南関係の悪化には南の情勢も関係しているように見える。 B 「ニューライト全国連合」をはじめとする親米保守団体の台頭やハンナラ党支持の高まりなど、南社会の保守傾向が最近顕著だ。米情報当局の息のかかった「ニューライト全国連合」は、「反6.15」「政権奪取」を公然と表明している。南朝鮮版「ネオコン」が台頭している反面、盧武鉉政権の支持率の低下や進歩陣営の足並みの乱れが目立つ。 D 当局間の対話が途切れて久しいし、盧武鉉政権の「レイムダック化」も指摘されている。北南関係もやはり米国次第なのか? A 核問題をはじめとする朝鮮半島問題が朝米間の対立に起因している以上、朝米関係の改善が問題解決のカギを握っていることは論を待たない。かといって北南が朝米の従属変数にすぎないといった見方では、情勢判断を誤ることになる。 B 現在の状況は93〜94年の「核危機」と似通っているが、その当時と決定的に違うのは6.15共同宣言の存在だ。 C 民間レベルの交流と協力は現在も途切れることなく続いている。ミサイル発射訓練や核実験後も、南側市民団体や政党代表団の訪北が相次いだ。分断史上初めての「6.15民族文学人協会」の結成や「北南言論人討論会」も記憶に新しい。7月に朝鮮半島を襲った水害で北側に大きな被害が出たときは、市民団体を中心に支援活動が行われた。 A 04年に北南対話と交流が全面ストップしたのに比べると、今回は民間レベルの活発な動きが目立つ。また、南社会の意識の変化も重要だ。米国を統一への障害と見なし、北を敵ではなく共に統一へと向かうパートナーと見る若い世代の認識は、情勢が緊張する中でも大きく変わっていない。北南関係は紆余曲折を経ながらも確実に発展している。 D 今後の関係をどう展望すればいいのだろう? B 何よりも、中断状態にある当局間対話を復活させることが急務だといえる。最近南では対北特使の派遣や最高位級会談の開催などといった声が盛んに挙がっている。北も対話の再開に積極的な姿勢を見せていると伝えられている。対話のチャンネルは遠からず開かれるだろう。 C 対話が再開しても、民族内部の制度的障壁を解消しなければ、進展は望めない。「根本問題」解決へ向けた南側の決断が求められる。北南関係が相互不信と対決の過去へと逆戻りする可能性は低いが、「6.15時代」を確かなものにするためにも、関係を一つ高い段階へ押し上げていく時期に来ている。北南が力を合わせて6.15共同宣言の実践へともう一歩踏み出し、朝鮮半島情勢打開へのイニシアチブを発揮していくのか、あるいは現状維持に甘んじ足踏みを続けるのか。その真価が問われていると言えよう。(整理=李相英記者) 2006年北南関係 主な動き
[朝鮮新報 2006.12.21] |