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〈担当記者座談会 06年朝鮮半島情勢を振り返る@〉 朝米関係

 2006年、朝鮮半島を取り巻く情勢はまさに「激動」の一語に尽きる。朝米関係、北南関係、朝鮮国内情勢などをテーマに4人の担当記者が今年を振り返り、今後の展望について語った(3回連載)。1回目は朝鮮の核実験が国内外に及ぼしている影響などについて見た。

堂々と会談に臨む

 A 昨年11月以来中断していた6者会談が18日から再開されることになった。この間、朝鮮側は金融制裁解除を要求する一方、米国は応じられないと主張し平行線をたどってきた。しかし10月9日の朝鮮の核実験以後、状況は一変した。

 早速中国が仲介に乗り出し、朝米接触の場を設け、6者会談再開にこぎつけた。それまでは朝米のみの接触を頑なに拒んできた米国だが、事実上の2国間会談に応じ、また、金融制裁問題も話し合う構えを見せている。この事実だけを見ても、朝鮮の核実験が緊張を高めるのではなく、逆に膠着し続けていた状況を打開させるきっかけになったと言えるのではないか。

 C 核実験を成功させ核保有国となった朝鮮は米国と対等の立場に立った、米国の核による一方的な脅威、恫喝はもう通じなくなった、と平壌の関係者は見ている。

 実際、金桂官・朝鮮外務次官は11月28日、米国代表との接触のため北京に向かう途中、記者団に、「われわれは核実験を通して制裁と圧力に対応できる全ての防御的措置を取ったので、堂々たる地位でいつでも会談に出られる」と、自信たっぷりに語った。

 D でも関係各国は朝鮮を核保有国としては認めないと言っている。

 B 核保有は自衛を目的としているので、他国が核保有を認めようと認めまいと関係ないというのが朝鮮側の原則的な立場だ。12月11日付労働新聞論評は、「われわれは自衛のために核兵器を開発、保有した。決して誰かの認定を受けるために開発、保有したわけではない」と指摘している。

 朝鮮が目指しているのはあくまでも朝鮮半島の非核化であって、核保有国の地位ではない。最終目標は「朝鮮半島でわれわれの一方的な武装解除につながる『非核化』ではなく、朝米敵対関係を清算し、朝鮮半島とその周辺からすべての核の脅威を根源的に取り除く非核化」(核実験を宣言した10月3日の朝鮮外務省声明)だ。

計画された行動

 D 朝鮮は先に核保有を宣言し、後に実験を行うという形式を取った。そもそも朝鮮はなぜ核実験に踏み切ったのか。

 B 一言でいえは、米国の恒常的な核脅威から国を守るためだ。核実験実施後の11日、朝鮮外務省スポークスマンは談話を発表し、「米国によって日ごとに増大する戦争の危険を防ぎ、国の自主権と生存権を守るためやむなく核兵器保有を実物で証明して見せざるをえなくなった」と指摘した。

 C 核実験実施により、6者会談での朝鮮の立場は有利になったか、不利になったかといえば、明らかに前者だ。米国からしてみれば、さらに厄介な問題が生じた。米国が朝鮮に要求する「核放棄」の対象に、核施設および物質の凍結とともに「核兵器」が含まれた。

 今ふり返ってみると、ミサイル発射訓練、核実験、そして6者会談再開まですべて綿密に計画されたシナリオだったと思えてならない。

 6月1日、朝鮮外務省が6者会談米国代表を平壌に招請する談話を発表したが、実はこれが最後通牒だったのではないか。朝鮮側は米国の招請拒否で、米国には対話による問題解決の意思がないことを確認。以後ミサイル発射訓練、核実験と実行していった。そして米国が拒否し続けてきた2国間会談、金融制裁解除をせまり、6者会談再開を実現させた。

 A そういえば、その時期に予定されていたさまざまな行事、例えば北南鉄道連結式、金大中前大統領の訪北、8.15統一行事などが中止された。さらには8月から10月まで盛大に行う予定だった大マスゲームと芸術公演「アリラン」も急きょ来年春に延期された。なぜそうする必要があったのか不思議に思っていたが、一連の決断がすでに下されていたとすれば納得できる。

軍事費の負担軽減

 A 核実験は、軍事政治的な立場を高めるとともに、国内経済にも大きな影響を及ぼしている。

 C 核実験後、平壌市民の間では、ついに経済建設に全力投球できる環境と条件が整った、との声が相次いでいた。敵国からの侵略を抑止する力を示したことに、人民は大きな誇りと自信を持った。

 B 朝鮮中央通信は03年6月9日、興味深い論評を発表している。「われわれが核抑止力を保有しようとするのは、通常兵器を縮小し、人的資源と資金を経済建設と人民生活に回すのを展望してのことだ」と指摘した。朝鮮は今まで国家予算の多くを軍事費にあててきたが、この論評どおりだと、今後その資金を経済発展のために回すと考えられる。来年度の国家予算の配分が注目される。ちなみに、朝鮮の国防費予算は近年、全体の15%前後を占め、今年度は15.9%だった。

 D 国連の制裁決議や日本独自の制裁による影響はないのか。

 C 04年12月の話だが、貿易省幹部は日本の経済制裁の影響について、「一時的な混乱」はありえると認めながらも、それが局部的であり、すぐに回復できると話していた。日本との交易は主に、衣類などの日用品や魚介類などの食品で、原油やコメなどの戦略物資が含まれていないので決定的な打撃にはならないという。今は違う意味で「一時的な混乱」状態にあるようで、従来は日本に輸出されていた品が国内に多く出回り、かえって活況を呈している現象も起きている。

朝・日は朝米の進展次第

 A 朝・日関係は史上最悪の状態といえる。

 D しかし朝米関係さえ改善されれば朝・日関係も自ずと改善されるのではないか。朝鮮側は、日本に独自性はなく、米国のひとつの州くらいにしか思っていない。

 B 問題は日本が自らの行動範囲を狭めていることだ。安倍政権は、拉致問題を最優先課題としながら次々強硬姿勢を朝鮮に対して取っているが、仮に米国が政策を変化させても、これに対応できない状況を自ら作ってしまっている。

 C 朝米対立の根源は、米国の対朝鮮敵視政策にある。米国が朝鮮を威嚇しなければ核問題も生じなかったはずだ。

 朝鮮は常々、米国が朝鮮を敵視しないなら朝鮮も米国を敵視しないと言っている。双方の不信感は根強いが、米国が敵対関係を解消する決断さえ下せば、事は急展開する可能性もある。(整理=姜イルク記者)

核問題をめぐる朝米の動き

4月7日 朝米代表が東北アジア協力対話第17回会議(東京)に出席したが会わず(〜13日)
6月1日 朝鮮外務省が6者会談米国側代表のヒル国務次官補を平壌に招請。米国は拒否
7月5日 「自衛的国防力強化のため」朝鮮人民軍がミサイル発射訓練実施
10月3日 朝鮮外務省声明、核実験実施を宣言。「最終目標は朝鮮半島の非核化」と明言
10月9日 朝鮮の科学研究部門で地下核実験を「安全かつ成功裏に実施」
10月31日 「金融制裁解除の論議、解決を前提に」朝米中が6者会談再開に合意
12月18日 6者会談が昨年11月の第5回会談が中断されて以来13カ月ぶりに再開

[朝鮮新報 2006.12.15]