〈朝鮮学校への嫌がらせ問題〉 北海道の民間団体が声明発表 |
安心して学べるよう対処を 各地で頻発する朝鮮学校の児童、生徒に対する脅迫、嫌がらせ、暴行の問題で、北海道在日朝鮮人の人権を守る会などが連名で日本政府に適切な対応を求める声明を発表した。以下、全文を紹介する。 政府関係当局は、朝鮮学校児童、生徒が友愛の精神の中で、人間の尊厳と民族の誇りをもって、堂々と安心して学べるよう善処せよ! 声明 安倍新政権は、相次ぐ「いじめ自殺問題」を契機に、内閣が集中して「いじめ問題」解決に取り組むと述べている。次の世代の救済は喫緊の問題である。 報道等によれば、朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射実験を契機に、加熱した北朝鮮バッシングにより、またもや朝鮮学校の児童、生徒に対する暴言、暴行が執拗に繰り返されている。1989年のパチンコ疑惑、1998年のテポドン、2002年の拉致問題等など、朝鮮半島をめぐる情勢が緊迫するたびに朝鮮学校の児童、生徒に対する暴行、暴言が引き起こされてきた。 「お前らの学校はどんな教育をしているんだ」「三国人は日本から出てゆけ」「お前ら、大変なことをしてくれたな」「生徒の下校時間を教えろ」。さらに、札幌市平岡の北海道朝鮮初中高級学校に脅迫電話(7月6日)が、「朝鮮人を殺す」「一週間以内に高校生5人を殺してやる」「右翼だけどな、お前ら殺してやるからな。お前ら人間じゃねえ、動物だ、殺してやるからな」と。いまもその嫌がらせ、脅迫電話が執拗に行われているのである(在日本朝鮮人教職員同盟中央本部調べ)。東京朝鮮中高級学校の具大石校長は「北海道から九州にいたる全国で事件が発生している異常な状況の中で、朝鮮学校児童、生徒とその保護者は、身の安全まで脅かされ不安な日々を送っている」と告発されている。 朝鮮学校児童、生徒に対するこのような卑劣な攻撃は、断じて許されない! 人類は、児童にたいしてどのような態度で接してきたであろうか?「人類は児童に対して最善のものを与える義務を負う」と述べたのは、「児童の権利に関するジュネーブ宣言」(1924年9月26日、国際連盟総会採択)であった。この精神は、「国連児童の権利宣言」(1959年11月20日)へ、さらに「児童の権利条約」に受け継がれ、日本は、その条約の批准国である。国連児童権利条約は、「児童は、人種的、宗教的その他の形態による差別を助長するおそれのある慣行から保護されなければならない。児童は、理解、寛容、諸国民間の友愛、平和および四海同胞の精神の下に、また、その力と才能が、人類のために捧げられるべきであるという十分な意識のなかで、育てられなければならない」(第十条)と述べている。 安倍新内閣は、就任前から、朝鮮植民地統治、日本のアジア侵略戦争、「従軍慰安婦問題」「靖国参拝」「日本の戦争責任」にふれ、「適切に処理する」と「あいまいな態度」を変えていない。日本の若い世代に、政府は、日本の朝鮮植民地統治について、朝鮮人強制連行について、「アジア侵略戦争について」「戦時日本軍により性的奴隷を強いられた『慰安婦問題』」についてほとんど教えられることはなかった。「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」を世界に訴え、「日本の非核三原則」の堅持、東北アジアの非核化を求めるわれわれは、いかなる国の核実験も容認するものではない。他の大国が核実験をしても「制裁! 制裁!」と騒がないのに、なぜ朝鮮民主主義人民共和国だけを制裁するのか? ここに、米軍再編に関わって、日本の憲法体制を根底から破壊する意図を感じるのは、思い過ごしであろうか? 額賀、麻生両氏は、朝鮮を名指しで「先制攻撃論」をぶち上げた。朝鮮学校児童、生徒に対する、繰り返される攻撃は、このような戦争政策を背景にして作り出されているといわねばならない。 雨森芳洲は、江戸時代、対馬藩に在って、「誠心外交」を説き実行し、隣国朝鮮との「善隣、友好」を築いてきた。日本政府は、憲法九条、国連憲章、児童権利宣言の精神にたって、朝鮮学校の児童、生徒が、友情の精神の中で、人間の尊厳と民族の誇りをもって、堂々と安心して学べるよう、一切の処置を講ずることを要求するものである。 以上声明する。 2006年10月25日 北海道宗教者連絡協議会会長 松田平太郎 北海道キリスト者平和の会会長 斉藤成二 札幌カトリック正義と平和協議会会長 石田国夫 北海道在日朝鮮人の人権を守る会事務局長 山本玉樹 [朝鮮新報 2006.11.2] |