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〈ブッシュ政権 軍事再編戦略の危険性−下〉 米・日軍事一体化の実相

東京が南の米軍を配下?

駐日米軍横須賀基地を母港とする米第7艦隊の空母キティーホーク [写真=聯合ニュース]

 ブッシュ政権は欧州、南朝鮮駐留米軍の再編に続き、駐日米軍の再編に向けて、さる5月の米日協議で最終的な決定をした。

 合意マップによれば、駐日米陸軍司令部のある座間基地に、米本土・ワシントン州にある米陸軍第1軍団司令部が08年までに移転、さらに日本の陸上自衛隊中央即応集団も同居する。

 また、駐日米軍司令部と米第5空軍司令部のある横田基地(東京都)に、日本の航空自衛隊航空総隊司令部(府中市・空軍戦闘部隊)が2010年までに移転して、陸海空統合任務を遂行する拠点司令部(UEX)、米日共同ミサイル防衛(MD)基地として、対朝鮮作戦などの拠点となる。

 さらに、沖縄の米第3海兵機動遠征軍司令部と要員8000人が2014年までにグアムに移転(移転費3200億ドルは日本側が負担)、グアムは米軍のアジア4大拠点基地として強化される。日本海上自衛隊は1万5千トン級の大型高速船、大型ヘリ部隊を新設して、沖縄・グアム間の兵員、装備輸送にあたる。そのほか、沖縄・嘉手納米空軍基地を南方の名護市辺野古海岸に移転して米軍の陸空一体化を図る。厚木基地(神奈川県)で訓練している米第7艦隊(横須賀)航空母艦艦載機(57機)を岩国(山口県)に移し、同基地の沖合に埋め立て滑走路を増設して訓練を行うなどである。

 駐日米軍再編(トランスフォーメーション)の一環として、横須賀を母港とする米第7艦隊の空母が08年から原子力空母に替わり、米軍の移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が6月から航空自衛隊車力駐屯地(青森県)で運用を始める。対空ミサイルSM3を備えた米海軍の巡洋艦「シャイロー」が8月から横須賀に配備(海外では初めて)、沖縄・嘉手納基地に地対空誘導弾「パトリオット」(PAC3)が配備された。いずれも「朝鮮半島をにらんで」という触れ込みである。

 この駐日米軍の再編で最も注目されているのが、米本土から米陸軍第1軍団が座間に移転し、駐日米陸軍司令部および陸上自衛隊中央即応集団(緊急特殊部隊)と合体して、米陸軍の統合作戦司令部、アジア最大の統合基地になることである。

 米陸軍第1軍団は日本敗戦後に占領軍として日本に駐屯し、朝鮮戦争時は釜山に司令部を置いて北進戦に参加し、その後も南朝鮮や日本での米軍との共同演習に投入されている米陸軍の最精鋭機動軍だ。

 そのため軍事専門家の間では、南朝鮮米軍の戦時作戦統制権の返還に伴い解体される南朝鮮米国軍連合司令部に代わって南朝鮮の米軍をも指揮する上位の統合作戦司令部になり、司令官も中将から大将に昇格されるのではないかと見られている。

 朝日新聞9月7日付も「作戦統制権の移譲後、在韓米軍の縮小が進むなら、日本に司令部を移す米第1軍団が在韓米軍をも指揮する北東アジアの拠点司令部になる可能性がある」と指摘している。

 座間基地には「国連軍後方司令部」も置かれている。先号で述べたように、ブッシュ政権が戦時作戦統制権返還のあと、「国連軍を多国籍連合軍機構」に再編する場合、座間の位置と役割が増大するという見方もある。

不遜な「先制攻撃能力保有論」

 米軍と自衛隊との一体化、日本の軍備増強、米日共同演習は常に朝鮮半島がらみである。「三矢作戦計画」(米日の軍事協議で作成された米日韓の対北共同作戦秘密計画)は1963年のことであったが、その後も本質は変わらない。日本の自衛隊は90年代後半から米国の対朝鮮敵視政策に追従して、米軍との一体化、共同作戦体制づくりに熱中してきた。

 米日安保共同宣言(96年)、新ガイドライン(97年)、周辺事態法(99年)、有事3法(03年)、新防衛計画(04年)と続く。98年に朝鮮の人工衛星打ち上げを「ミサイルの発射」と強弁しつつ、米国と共同で始めたミサイル防衛(MD)研究は共同開発(1兆2千億円の予算)へと進み、偵察衛星(スパイ衛星)もすでに3基が打ち上げられ、来年に1基が追加されると、1日に1度は朝鮮の目標物を探査、撮影できるという。地上発射型PAC3、海上発射型SM3の迎撃ミサイルの配備も進んでいる。

 昨年2月の米日安全保障会議で双方は、「共通戦略目標」で合意、「日米軍事同盟の役割範囲を世界的規模に拡大する」こととし、その対象地域として「北朝鮮」と「台湾海峡」を明記した。日本は「日米同盟の強化」「米国との協力」を唱えながら、日米軍事一体化を推進しつつ、自らの軍備増強、装備の先端化をめざしている。

 それは米日共同作戦演習にも表れている。04年1月には、陸上自衛隊・朝霞基地(埼玉県)で「日米共同方面隊指揮所演習」が行われたが、その内容は「某国(北朝鮮)軍を2週間以内にせん滅する」というものだった。また同年10月、東京湾では日本防衛庁の主催で米、豪州など12カ国が参加した、朝鮮をターゲットとする大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の洋上捜索、封鎖演習が行われた。また94年に米国の要請によって、海上自衛隊が朝鮮領海内で作戦を展開し、航空自衛隊は朝鮮の軍事拠点を空爆するというシミュレーション(図上演習)を行っていたことが、昨年4月の大野防衛庁長官(当時)の談話によって明らかとなった。

日本はどこへ行くのか

 小泉前首相は「世界の中の日米同盟」を高唱しつつ、米国側から「ショウ・ザ・フラッグ」(旗色を鮮明にしろ)と言われて、海上自衛隊をアラビア海の掃海、多国籍軍への給油に派遣し、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(派遣部隊を見たい)との要求でイラクに自衛隊を派兵した。

 小泉政権下の額賀、麻生氏らの閣僚は不遜にも、朝鮮を名指した「敵基地先制攻撃能力保有論」をぶち上げて内外の批判を浴びた。

 やはり小泉政権下の閣僚として「原爆の保有も戦術核の使用も合憲」、靖国神社参拝は次期首相も継承すべきだと強調してきた安倍晋三氏が日本の新しい首相となり、改憲(新しい憲法制定)や集団的自衛権の解釈変更による許容などを打ち出している。朝鮮に対する「経済制裁」措置も加速化している。

 日本はどこへ向かうのか?

 アジアの人びとも、そして世界も警戒心を持って注視している。(韓桂玉、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授)

[朝鮮新報 2006.10.14]