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山口県弁護士会 県知事らに増額要請 「助成金額 一桁違う」

 山口県弁護士会が二井関成・山口県知事をはじめ下関、宇部、山陽小野田、山口、防府、光、下松の各市長に朝鮮学校への助成金の増額などの処遇改善を求める要請文書を4月6日、送付した。都道府県の弁護士会が朝鮮学校の処遇改善を求める要請を行ったのは今回が初めてのケース。これを受けて、「山口県民族教育を支えるオモニたちのネットワーク」(「ネットワーク」)のメンバーと各階層の代表らが4月24日、山口県庁を訪ね県知事あての要望書を提出した。

都道府県では初めて

県庁を訪れた「山口県民族教育を支えるオモニたちのネットワーク」と各階層の代表ら

 山口県弁護士会が送付した要望文書は、県の私学助成(2003年度)の一人当たりの額が、幼稚園児(学校法人立以外)13万2400円、幼稚園児(学校法人立)16万5500円、小中学生26万1000円、高校生(通信制)5万5000円、高校生(全日制)31万6500円であるのに対し、県内の各朝鮮学校の一人当たりの額は、幼稚園児を除いて6万2990円、幼稚園児を含めると5万5186円であり、私立学校とは一桁違うと指摘。人間の自然権としての基本的人権のよう護と平等、国際協和をうたっている日本国憲法や国際法の求めに応じたものとは言えないと述べた。

 また、日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」は、28条においてすべての子どもが初等教育を義務的、無償で受ける権利を有すること、中等教育を奨励、援助する国の責務、29条において子どもと両親の文化的同一性や、出身国の国民的価値観などの尊重の育成への国の責務、30条において少数民族の自己の文化、言語などの享有の権利などを保障していると強調した。

要望書を提出する「ネットワーク」の副代表

 そして、43条に基づき条約の実施状況を審査する機関として設置された子どもの権利委員会が、日本での条約の実施状況を審査した最終見解(2004年2月26日)において、「韓国、朝鮮人…の子どもに対する基本的サービスへのアクセスを確保するために必要なあらゆる積極的な措置を実施するよう、勧告する」(25項)、「委員会は…以下の点を懸念する。…日本国内の外国人学校の卒業生に対する大学受験資格が拡大されたものの、一部は高等教育へのアクセスが引き続き否定されていること。…マイノリティーの子どもが自己の言語での教育を受ける機会が否定されていること。…マイノリティーの子どもが、自己の言語での教育を受ける機会が、きわめて限定されていること」(49項)、「委員会は、締結国に対して、以下のとおり勧告する。…マイノリティーグループの子どもに対する、自己の文化を享受し、自己の宗教を表明かつ実践し、自己の言語を使用する機会を拡大すること」(50項)と勧告していることに触れながら、日本弁護士連合会も政府あてに朝鮮各級学校などの在学生、卒業生の大学受験資格を認めることや、私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金の交付を勧告したと強調した。

 そのうえで、在日朝鮮人が居住する地方自治体が、その住民の人権尊重の観点から今以上に大きな役割を果たすことが可能であり、いっそうの努力が期待されると締めくくった。

 今回の要請文書の送付は、「ネットワーク」のオモニたちを中心に各階層の同胞らが地道に働きかけて実現したもので、要請文書の作成に携わった田畑元久弁護士は、「朝鮮学校の母親たちが権利獲得のために要請文書を有効的に使ってくれれば」と語った。

朝鮮学校の現状訴える

 韓裕子副代表をはじめとする「ネットワーク」のオモニたち8人と下関朝鮮初中級学校の金鍾九校長ら各階層の代表らは、県知事あて要望書を提出した席で、朝鮮学校の置かれている厳しい状況について語った。

 「2人の子どもを朝鮮学校に送っているが、毎月の経済的負担は決して軽くない。細々と自営業を営みながら、県民としての納税義務を果たしているのだから、最低限の権利を与えてほしい」「学校運営の足しにしようとオモニたちはもちろん、ハラボジ、ハルモニたちも廃品回収などをやっているが、焼け石に水だ」「日本の学校で給料がもらえなければ、普通は辞めるだろう。しかし、朝鮮学校の教員たちは父母の思いを知っているので経済的に厳しい中でもがんばっている。そういう気持ちを知ってもらいたい。県知事が会わないのは関心がないからではと思うと悲しい」

 そして、県が朝鮮学校に対して適用している「私立外国人学校特別補助金」を私立学校と同程度に増額すること、広島や福岡など他県の朝鮮高級学校に通う生徒に対し、別名目の助成金を支給することなどを求めた。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2006.5.9]