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静岡県下の朝鮮学校など19校 外国人学校協議会結成、力を合わせ十分な教育環境を

 静岡県にある19の外国人学校が8日、静岡県外国人学校協議会を結成した。浜松市内で結成式が行われ、今後、力と知恵を合わせて私立学校並みの処遇獲得を目指して行政に働きかけていくことが呼びかけられた。外国人学校協議会の結成は兵庫に続き10年ぶり2カ所目。

静岡県下の外国人学校が一堂に会したのは初めてのことだ

 結成式には、静岡朝鮮初中級学校をはじめとする外国人学校の校長や教員、行政からは静岡県国際課、浜松市教育委員会関係者、そして浜松国際交流協会の代表らが参加した。また、協議会の初代会長にブラジル人学校、エスコーラ・ウノの永井太郎副校長、副会長にエスコーラ・コニェーセルのシロ・ヨシオカ校長、会計担当にエスコーラ・フジの神尾正和理事長、事務局長に静岡朝鮮初中級学校の李英三校長が選出された。あいさつに立った永井会長は、「ブラジルと同じ環境、カリキュラムで子どもたちが安心して勉強できるようにしたい」と夢を語った。

 つづいて兵庫県外国人学校協議会の林同春会長、田中宏・龍谷大学教授が来ひんのあいさつを行った。林会長は、「互いに協力しあっていくことは簡単ではないが、協力の結果はすばらしい。行政も積極的にバックアップしてほしい」とエールを送った。兵庫県では、1995年の阪神淡路大震災で半壊、倒壊した県下の外国人学校がその年の7月に兵庫県外国人学校協議会を設立、ともに行政や日本政府に働きかけた結果、県の教育振興費補助金を4.5倍(来年度)にまで引き上げた。全国でトップレベルだ。

朝鮮舞踊を披露する静岡初中の生徒たち

 田中教授は、「30年前に文部省の通達に反して東京都が朝鮮大学校を各種学校として認可し、その30年後には静岡県が各種学校の認可基準を緩和し、ペルー人学校が資格を取得した。岐阜、愛知でも行政の対応に変化が出てきている」と取り巻く変化を語った。

 2部では朝鮮学校やブラジル人学校生徒による朝鮮舞踊やポルトガル語の合唱が披露された。

 現在、静岡県には18のブラジル人学校、ペルー人学校、朝鮮学校がそれぞれ1校あるが、協議会への参加はペルー人学校を除く19校。同協議会は今後、地域の日本学校との交流を深めながら、国連の「子どもの権利条約」などに基づき、外国人学校の教育環境を整えていく。当面、学校認可の取得が切実なブラジル人学校の認可申請を県に行う。10月29日には子どもたちの文化交流を予定している。

 静岡県に住む外国人の50.3%はブラジル人で最多だ。2000年3月に6校だった南米系学校は5年間で19校に増えた。しかし、自前の校舎がないことや、日本語が不自由で行政との交渉ができず、その多くが私塾扱いのままだ。

ブラジル人学校のエスコーラ・ウノの児童たちはポルトガル語で合唱を披露した

 南米系学校が各種学校の認可を得るための最大のハードルは、校舎が自前のものではないことだったが、静岡県はたび重なる学校側の要望を受け審査基準を緩和。実情に詳しい地元市町村が要望すれば、校舎が借り物でも各種学校として認可するようになった。この「静岡県方式」の導入によって、ペルー人学校ムンド・デ・アレグリアが04年に南米系学校として初めて各種学校認可を取得した。ただ、県下のブラジル人学校は一校も認可されていない。

 静岡初中の李英三校長は、昨年9月に神戸で行われた外国人学校の交流会に参加し、静岡で協議会を作ることを決心したという。フォーラム後、県下の外国人学校を訪ね、切迫した実情を目の当たりにし、「一日も早く結成を」との思いを強めた。「朝鮮学校は権利獲得運動を切り開いてきた。外国人学校の先輩だけに、他の学校が直面する問題解決にアドバイスをし共に力を尽すべきだと思った」。

 ブラジル人学校の多くは1カ月の学費が4〜5万円に達する。グラウンドもない。校舎も貸しビルかプレハブで、スペースは狭く教室はすし詰め状態だ。

 ブラジル人学校が「静岡県方式」によって各種学校の認可を獲得すれば、通学定期券の割引が適用され行政から助成金も支給されるが、問題の根本解決にはならない。高い学費を納められない子どもは、教育すら受けられない現状だからだ。

 「静岡県方式」は、外国人学校を制度的に保障する法律がない中で、行政が外国人の学ぶ権利を保障した好例だ。

 兵庫に続き10年ぶりに結成された静岡県外国人学校協議会。協議会こそないが東京、神奈川、愛知、大阪でも外国人学校同士の地道な交流がある。こうした交流と積み重ねた地方の声が、制度の壁を崩してきたことは過去の経験が教えているだけに、今後、兵庫、静岡に続く協議会結成が待ち望まれる。(張慧純記者)

[朝鮮新報 2006.3.16]