そこが知りたいQ&A−朝鮮が核実験を行ったが |
米の脅威に対する自衛が目的 非核化への意思強調 朝鮮は9日、核実験を行ったと発表した。米国の圧力に対抗する自衛措置の正当性を主張する朝鮮。対して、国連安保理は「制裁」の法的根拠となる国連憲章第7章を盛り込んだ「決議」を採択した。日米が主導した「決議」採択によって、朝鮮半島の緊張の度合が増している。核実験の目的、実験に至った経緯、その後の動きなどについてQ&Aで見た。 Q 朝鮮が核実験を行ったが A 朝鮮中央通信社が9日発で報道したのは周知の事実だ。それによると、「科学研究部門で10月9日、地下核実験を安全かつ成功裏に行った」としている。実験の規模などの詳細は明らかにされていないが、「科学的打算と綿密な計算によって行われ、放射能漏れのような危険が全くなかったことが確認された」という。また、実験が100%自国の技術によって行われたことを強調し、「強力な自衛的国防力を渇望してきたわが軍隊と人民に喜びを与えた歴史的な出来事」だと評価した。 これに先立ち朝鮮は3日の外務省声明を通じて、実験の実施を宣言していた。 Q 実験の目的は? A 米国の多方面にわたる圧力に対抗する「自衛的抑止力の強化」にあった。 「日ごとに増大する米国による核戦争の脅威と制裁圧力策動により、国家の最高利益と安全が侵害され、民族の生死存亡を決する厳しい情勢が生じている」(外務省声明)というのが、朝鮮側の認識だ。 核実験の直後に発表された外務省スポークスマン談話(11日)も、「国の自主権と生存権を守るためやむなく核兵器保有を実物で証明せざるをえなくなった」と指摘している。 「米国の反朝鮮孤立圧殺策動が限界点を越えて最悪の状況をもたらしている」情勢のもとで、やむをえず自衛的国防力を強化するための新たな措置として行ったと外務省声明が指摘するように、朝鮮の核は自衛の必要性から生まれたものだといえる。 Q 「米国の反朝鮮孤立圧殺策動が限界点を越えた」(3日、外務省声明)とあるが、具体的にどういうことなのか? A 1994年の朝米ジュネーブ合意、2000年の朝米共同コミュニケなどを経て、クリントン政権時代に関係正常化の一歩手前まで進んだ朝米関係だが、01年のブッシュ政権誕生後すべて反古にされ悪化の一途をたどってきた。 11日の外務省スポークスマン談話は、「対話と協議を通じた核問題解決のための朝鮮側の努力に、ブッシュ政権は制裁と封鎖政策で応えた」と指摘、「核実験を行わなければならなくなったのは、米国の核脅威と制裁圧力策動のせい」だと激しく非難した。 米国は一貫して朝鮮半島とその周辺で大規模な軍事演習と武力増強を行い、朝鮮に対する軍事的圧力をエスカレートさせてきた。 今年に入っても、3月末の「韓米連合戦時増援演習(RSOI)」と「フォールイーグル」に始まり、「バリアント・シールド機動訓練」(6月下旬)、「環太平洋合同演習(リムパック)」(6月末〜7月末)、「ウルチフォーカスレンズ」(8月末〜9月)などの合同軍事演習が相次いで実施された。 また昨年9月19日の6者会談共同声明発表の直後、米国はマカオのバンコ・デルタ・アジア銀行にある朝鮮の口座を凍結した。最近では日本とオーストラリアが、朝鮮の企業を対象にした財産の凍結措置を講じる金融制裁にも踏み切った。 朝鮮を「悪の枢軸」と名指し、重油の供給や軽水炉の提供など朝米間の合意を踏みにじったブッシュ政権の敵視政策に対して、朝鮮は自衛力強化のための段階的な対応措置を講じてきた。03年1月のNPT脱退に始まり、原子炉の再稼動、燃料棒の再処理、核保有宣言(05.2)、ミサイル発射訓練(06.7)などがそれに当たる。 ミサイル発射訓練に関する安保理非難決議の際も、決議を「事実上の宣戦布告」とみなし、「自衛的戦争抑止力を各面から強化していく」(7月16日、外務省声明)と宣言していた。 Q 核実験の一方で、核拡散防止義務の遵守や世界的な核兵器撤廃の推進についても言及しているが A 朝鮮は核実験の実施を予告した外務省声明(3日)の中で、「核保有国として国際社会の前に負った自らの義務を誠実に履行」することを明言した。 これは核保有国としての義務を明記したもので、核兵器保有後も朝鮮側は核の先制使用を決して行わず、核による威嚇と核の移転を徹底的に許さないことを意味する。朝鮮半島の非核化を実現し、世界的な核軍縮と核兵器撤廃のために努力するという立場も鮮明にした。 朝鮮の最終目標は、朝鮮側の一方的な武装解除につながる「非核化」ではなく、朝米敵対関係の清算を基に朝鮮半島とその周辺からすべての核の脅威を根源から取り除く非核化だ。 したがって朝鮮側は、核実験後も「対話と協議を通じた朝鮮半島の非核化の実現という原則的な立場に変わりはない」と強調している。米国が敵視政策を放棄すれば1つの核兵器も必要としないということも再三明らかにしてきた。「廃棄を前提とした核保有」というのが朝鮮側の主張だ。 Q 安保理の制裁決議が採択されるなど、朝鮮に対する圧力が強まっているが A 国連安保理は14日、船舶などの貨物検査や金融制裁を盛り込んだ制裁決議案を全会一致で採択した。安保理が強制措置の根拠となる国連憲章7章のもとで行動し、経済制裁などを定めた同章41条に基づく措置を講じたと主張している。 一方日本政府も13日の閣議で、▼朝鮮籍船舶の入港全面禁止▼朝鮮からの輸入全面禁止▼朝鮮国籍保有者の入国全面禁止を柱とする「独自の追加制裁措置」を決定した。 このような動きに対して朝鮮側は、「対話にも対決にもすべて準備ができている」とし、米国が圧力を強める場合、相次いで物理的な対応措置をとると警告している。 朴吉淵国連大使も、「安保理が中立性を喪失し2重基準を適用している」と非難、「不当な決議を全面的に拒否する」と述べた。 [朝鮮新報 2006.10.18] |