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〈月間平壌レポート〉 高まる対日批判の声

朝・日関係、朝米より悪化

 【平壌発=李相英記者】7月に入り、朝鮮半島情勢は大きく動いた。

連日のように反米キャンペーンが繰り広げられた7月、多くの市民が朝鮮人民軍に拿捕(68年)されたプエブロ号を参観した

 日本当局は5日に行われた朝鮮のミサイル発射実験に対して、元山と新潟をむすぶ貨客船「万景峰92」号の入港禁止を含む9項目からなる「制裁措置」を発動した。15日、国連安保理では朝鮮のミサイル発射を非難する決議が採択された。朝鮮側は、米国主導の安保理決議に「少しも拘束されるものではない」と宣言、「全ての手段と方法を動員して自衛的戦争抑止力を強化する」(16日、外務省声明)と、断固たる対応姿勢を鮮明にした。

 「反米闘争月間」にあたる7月、国内では連日の反米キャンペーンが繰り広げられた。

 一方、理性を失したメディアの「北朝鮮報道」や現役閣僚の「先制攻撃」発言など、戦争前夜をほうふつとさせる日本国内の雰囲気は、海を隔てた平壌にも伝わっている。国連憲章第7条の内容が盛り込まれた決議案の採択に狂奔する一方、「拉致問題」を騒ぎ立て朝鮮に対する圧力を強める日本の姿は、市民の目に完全に常軌を逸したものとして映っている。

「反人道的行為に憤り」

 7、8月は、年間を通して在日同胞の訪問者数が最も多い時期だ。しかし「万景峰92」号の入港禁止措置以降、在日同胞の往来は事実上ストップしている。空路を利用した訪問は細々と続いているが、一般同胞や学生らの大規模な祖国訪問は見合わせや中止が相次いだ。例年だと宿泊客でにぎわっているはずの平壌ホテルは閑散としている。

 「万景峰92」号の入港禁止措置以外にも、日本国内では朝鮮学校生徒らに対する暴行、脅迫事件が相次ぎ、総連に対する弾圧が強まっている。これらの事態は朝鮮国内で各種メディアを通じて大きく報道され、人びとの関心も高い。

 「万景峰92」号の入港禁止措置を受けて、赤十字会や海外同胞事業局、陸海運省など国内の関係各所へ取材を行ったが、関係者らはみな在日同胞が置かれた状況を心配し、激励の言葉を口にした。

 また、親族との面会の道を閉ざされた縁故者や、朝鮮学校生徒との交流行事を計画していた現地の学校関係者は、一様に残念そうな表情を浮かべていた。

 朝鮮赤十字会中央委員会のリ・ホリム副書記長は、朝鮮半島情勢が動くたび繰り返される在日同胞への迫害について、「人道事業に従事する者として、暗澹たる気持ちになるし、怒りを感じる」と、憤りをあらわにした。

 「日本で『北朝鮮の人権』がうんぬんされているが、はたして日本は在日同胞の人権を尊重しているのかと問いたい。何の罪もない在日同胞に被害をもたらす日本の『制裁』とは一体何なのか」

 日本国内の殺伐とした状況は、現在平壌に滞在中の在日同胞らにも断続的に伝えられている。滞在者の間からは、「これからどうなるのか」「日本に帰れないのでは」といった不安の声も聞かれた。

 7日、平壌での記者会見における「朝・日関係は最悪の状態を超えて対決の状態にある。朝米関係よりも悪化している」という宋日昊・外務省朝・日国交正常化会談担当大使の発言は、朝鮮人民の偽らざる心情を代弁していることはまちがいない。

北南関係も冷却化

 緊張が高まる朝鮮半島情勢は、北南関係にも暗い影を落としている。

 11日から釜山で開かれた第19回北南閣僚級会談は13日、何の成果もないまま終了した。共同報道文も発表されず、予定より一日早く終了するという異例の事態だった。

 釜山閣僚級会談の決裂により、北南間の対話と交流は凍結状態にあると言っていい。

 19日、朝鮮赤十字会中央委員会は南朝鮮赤十字社に対し、離散家族の再会事業や金剛山面会所の建設など、北南間の人道主義的事業の中止を通達した。2008年北京五輪統一チーム結成を議論する北南スポーツ会談も再開のめどが立っていない。

 また、解放61周年に際し14日から平壌で開催予定だった「自主、平和、民族大団合のための8.15民族統一大祝典」も中止になった。こちらは水害のためだという。

被害復旧に全力を

 南で猛威を振るった熱帯性低気圧による大雨は、北側にも甚大な物的、人的被害をもたらした。15日から16日にかけて、平安南道をはじめ黄海南北道、咸鏡南道、江原道などの広い地域を「バケツの水をひっくり返したような」豪雨が襲った。当局の発表によると、被害の最も大きかった大同江上流地域では、15日だけでも18時間に450ミリ近くの降雨が記録された。

 26日にも再び大雨が降り、被害拡大が心配されている。農業部門にも少なからぬ影響があるという。

 平壌市中心部でも大同江が氾濫し、江畔に停泊中の遊覧船が遊歩道に乗り上げるなど、豪雨の爪痕がかいま見られた。

 国内メディアは、全人民が一致団結して被害復旧事業に取り組むよう訴えている。 

[朝鮮新報 2006.8.4]