top_rogo.gif (16396 bytes)

〈ニュースを見る眼〉 北南列車試験運行中止 「わが民族同士」で解決しなければ

 「すべての協力と交流を一瞬のうちに遮断できる軍事的緊張を緩和し、西海上の衝突のような中核的な軍事問題解決に取り組むという責任ある決断を下すとき、北南関係で提起されるすべての問題は自ずと解決されることを知るべきだ」(北南軍事会談北側スポークスマン)

 5月25日に予定されていた北南列車試験運行は前日、北側の通報で突然中止された。南の統一部はこの日、緊急記者会見を開き声明を発表した。席上、申彦祥次官は「北の軍が今回の運行に消極的立場のようだ」との主張を展開した。ただし、この主張に何か根拠があるようには見えなかった。

 案の定、北側はこうした南側の対応に激しく反発した。北南閣僚級会談の権浩雄北側団長(内閣責任参事)は26日、南側首席代表の李鍾奭統一部長官に電話通知文を送った。祖国平和統一委員会スポークスマンも同日、談話を発表している。両者とも「当局者、与野党関係者、対北専門家らの口を借りて、あたかも中止の責任が北側にあるかのように世論をミスリードしている」と批判した。

 そして、27日には北南軍事会談北側スポークスマンが談話を通じて、今回の中止問題に対する公式の立場を表明した。そこで北側は、@「平和体制」樹立、北南協力交流の活性化という南側の主張は虚偽と欺まんに満ちているA南側は列車試験運行を政略的に利用しようとしているB北南経済協力と交流を正しく実現し、朝鮮の軍隊が軍事的保障措置をそのつど講じられるよう、南側が努力を傾けていない―点を中止決断の理由にあげた。

 ここで強調されたのは、▼西海上の衝突防止問題を根本的に解決するには新しい西海上の軍事境界線を設定すべきだ▼南側は西海線(京義線)鉄道連結工事にのみ重きを置き東海線工事には力を入れていない▼開城工業地区建設をはじめとする北南協力交流が短命に終わった軽水炉建設のようにならないかを注視している、というもの。南に対して言ってはいるが、間接的に米国を非難しているようにもとれる。

 列車運行中止によって北南関係はこう着状態に陥るものと憂慮されたが、金大中前大統領の訪北日程が決まり、経済協力推進委員会も3日から済州道で予定どおり開かれる模様だ。

 29日の実務接触では、金前大統領が陸路で平壌を訪れることで原則合意した。ただ、前大統領が望む列車による訪問の可能性は、現在の状況ではきわめて低いものと思われる。

 金前大統領は先月23日、自らの訪北が「南北間の交流協力と6者会談など朝鮮半島の平和協力体制増進に役立つことを願う」と述べた。

 南の進歩的学者の間では、現状況を打開する糸口は金前大統領の訪北しかないとの意見も提起されている。「(この時に)北は自分たちの考えを間接的に表現するであろうし、南北関係を解決できる契機となるであろうこの機会をうまく生かすべきだ」(リ・チョルギ東国大教授)というわけだ。

 もちろん、この訪北がどう作用するかは未知数。「政府の特使でもなく、いかなる使命も受けていない」と金前大統領が強調するように、あくまで個人的資格での訪北だ。

 とはいえ、金正日総書記が昨年、平壌を訪問した鄭東泳・前統一部長官と会見した「6.17面談」を契機に、こう着が続いていた北南関係がまるで「氷が解けるように」好転していったこともまた思い出すのである。

 盧武鉉大統領は5月9日、滞在先のモンゴルでこう語った。

 「米国と周辺国とのさまざまな関係があって、政府がすぐにできないこともあるが、金大中前大統領が道を開いてくれれば私もひそかにできるし…」

 特使として派遣するわけではないが、6.15時代を導いた人物として北南関係の発展をもたらしてくれるものとの期待は当然あろう。「米国と周辺国とのさまざまな関係」によって政府はブレーキをかけられるが、それを突破する機会として訪北をとらえているのかもしれない。

 モンゴル発言中で盧大統領はこうも述べている。「われわれは韓米連合訓練を行っているが、北から見れば不安なようだ。このような事情から北も心を開けないでいる」。偶然だろうが、現在の状況と重なる部分がある。「金前大統領と会えば、北も融通を利かせた対話をできるだろう」と盧大統領は続けた。

 民族の問題は、結局のところ「わが民族同士」で解決しなければならない。一連の動きはそのことをあらためて示唆している。(文聖姫記者)

[朝鮮新報 2006.6.2]