〈月間平壌レポート〉 「総連、民団共同声明」も歓迎 |
【平壌発=李相英記者】5月中旬から朝鮮各地の協同農場で田植えが始まった。例年は5日頃から始まるが、今年は天候の関係で1週間から10日ほど遅れたという。20日からはいっせいに農村に対する支援活動も始まった。「農村支援」のプラカードを掲げた大型バスが市内を行きかう光景が目立つようになった。 農繁期に入り、平壌中心街では日中人びとの往来はまばらに感じられるが、在日同胞や海外からの訪問者が数多く訪れ、対外的な人的交流はむしろ活発になっている。 同胞社会の動向に関心
今年度の在日同胞短期祖国訪問事業が4月末から始まった。4月26日に新潟港を出航した第1便以降、「万景峰−92」号は5月に入っても多くの訪問者を乗せて朝・日間を行き来している。冬の間は閑散としていた平壌ホテルも、同胞宿泊客を迎えてにわかに活気づいてきた。 待ちに待った新潟−元山間「万景峰−92」号の定期運航。長旅を終えて、ホテル職員や朝鮮の家族、関係者らの歓迎を受けながら、安堵の表情を浮かべる同胞の姿が印象的だった。 4月末から5月初めにかけては、大阪同胞祖国訪問団200余人がチャーター機で朝鮮を訪れた。 一方、総連中央と民団中央代表との会談が5月17日、東京の総連中央会館で行われ、両団体の和解と協力をうたった共同声明が発表されたことは平壌でも大きな話題となっている。歴史的会談のニュースは東京発の朝鮮通信=朝鮮中央通信として、国内の主要新聞やテレビなどのメディアで報じられた。 50余年の対立と反目を超えて初めて両団体のトップが会談したことについて、平壌市民は一様に「喜ばしいこと」と歓迎している。「おめでとう」と記者に声をかけてくる人もいた。 海外同胞事業局の関係者らも、「6.15共同宣言の生活力が在日同胞社会でも発揮された。総連に対する日本当局の弾圧が厳しさを増しているが、在日同胞が力を合わせがんばってほしい」と話した。 5月25日、総連は結成51周年を迎えた。平壌に滞在している在日同胞らも結成記念日を祝った。あいにく記者は開城に出張中で参加できなかったが、ホテルでは51周年を祝うささやかな宴会も催された。 「人々のふれあい大事」 政府レベルでは改善の兆しが見えない朝・日関係だが、民間の交流は着実に行われている。 大阪の市民らで構成された「日朝友好の翼」代表団が4月30日から5月5日まで、大阪同胞祖国訪問団とともに訪朝した。代表団は行く先々で熱烈な歓迎を受けていた。初めて訪朝するメンバーが大半を占めたが、「先入観を持たず、あるがままの朝鮮を見るよう心がけた」と、代表団の有本幹明団長(「日朝国交正常化の早期実現を求める市民連帯・大阪」共同代表)。明るく気さくに現地の人びととふれ合うメンバーを見て、「関西人の気質です」と笑いながら話した。 日本の寺院の住職、僧侶、関係者らで構成された「日本代表聖地巡礼訪朝団」も5月23日から27日まで朝鮮を訪れた。訪朝団は25日に開城を訪問し、昨年10月31日に復元落成された霊通寺で、朝鮮の仏教徒らとともに法要を行った。 横浜から来たという30代の僧侶に霊通寺訪問の感想を尋ねると、「法要の準備に忙しくて、ゆっくりと見て回る時間もなかった」と苦笑いしながらも、「住む国も文化も違うが、同じ仏教徒として何か相通じるものを感じた」とさわやかな笑顔を見せた。 訪朝団の名誉団長である有馬ョ底・臨済宗相国寺派管長の誘いを受け訪朝した杉山史さんも、「景色の良さや人びとの温かさなどいろいろな魅力がある。日本と朝鮮が仲良くするために、私たち一般の市民も貢献しなければと思っている」と話した。 朝・日間の民間交流の現場に立つと、「政治は民衆の力だ」という西郊良光・横浜円満寺住職(訪朝団団長)の言葉が、いっそうの説得力を持って響いてきた。 目下の関心は北南関係 北南関係に目を移してみると、25日に予定されていた東、西海線での列車試験運行が、新たな日程も決まらぬまま中断状態にある。 合意を受けて開かれた軍事将官級会談が、南側の不誠実な態度により成果なく終わると、平壌では列車試験運行の実現を危惧する声が多方面から上がった。中止発表後、関係者からは「やはり」「悪い予感が現実になった」という声が多数聞かれた。北側から相次いで発表された一連の通知文や談話は、和解と統一の実現において避けて通れない根本的な問題がいまだ解決されぬまま残っている北南関係の現状を鋭く指摘している。 6月14日からは南側の光州で「6.15共同宣言発表6周年民族統一大祝典」が開催される。6月下旬に決まった金大中前大統領の平壌訪問にも注目が集まっている。 昨年は、共同宣言発表5周年を契機に、北南関係において「第2の6.15」と呼ばれる新たな流れが生まれた。6周年目を迎える6月、北南関係はどう動くのか。平壌市民の目下の関心はその行方に注がれている。 [朝鮮新報 2006.6.2] |