「朝鮮大学校の50年の歩みと未来」(下) 地域社会に根ざす大学に |
平和の時代へ
以上、限られた時間の中で50年の足跡をかいつまんで見てまいりましたが、つぎに本学の未来について、「これからのお話」をさせていただきたいと思います。 半世紀にわたる歴史を刻んできた本学の前には、今日新しい時代の要請に沿った多くの課題が提起されております。 それは一言で表すなら、本学が自らの可能性と役割をより大きな視野で捉え、実現していくことであるといえます。 現在、朝鮮半島を取り巻く国際的な政治状況は非常に緊張したものであり、朝・日の関係もかつてなく厳しい「冬の時代」にありますが、このような「きしみ」は、一方で世界とアジアにおける新時代の秩序と平和が模索されていることの証でもあります。
朝鮮のことわざに「闇が深いほど夜明けが近い」というものがありますが、共和国をめぐる昨今の対立や軋轢は、冷戦時代が残した最後の遺物である朝鮮半島の分断が解消され、アジアの安定と発展の基盤が築かれていく過程での、いわば「産みの苦しみ」であると考えております。 このような歴史の変革期において、本学は自らの独自性を生かし、世界各地に居住する朝鮮民族を結ぶ国際的なネットワークの中心として、また、北南朝鮮の統一に向けた交流の拠点として、そして朝・日の相互理解を深める友好のかけ橋としての役割をより積極的に担っていくことを展望しております。 今回50周年を迎える記念行事として本シンポジウムが開催され、またこのような緊張した情勢の中でも12月1日と3日に本学サッカー部と中国および日本の大学サッカー部による親善交流試合「東アジアCollege Friendship Cup in Japan」が企画、実現される運びとなったことなどもその一環であるといえます。 学術的な面においても、本学は近隣の大学をはじめさまざまな日本の大学や、広く海外の大学との単位の互換、留学生および教員の交換、共同研究の活発化、学生間ネットワークの活性化など、幅広い交流を積極的に行っていくことを目指しております。 国際シンポ開催
来たる11月26日に学内にて本学研究者と韓国、日本、中国、ロシア、モンゴル、インドネシア、イギリス、米国など9つの国と地域の代表が参加する「アジアの渡り鳥保護国際シンポジウム」の開催が実現することとなりました。 11月23日には、昨年の本学学園祭を機に、学生たちの常設的な交流の窓口として結成された「朝・日学生友好ネットワーク」が一周年を迎え、記念イベントが開催されるなど、その活動はさらに勢いを増しております。 そしてまた本学は、地域社会に根ざした「地域密着型」の大学を目指し、学園祭や各種のボランティア活動などの地道な草の根交流から朝鮮問題に関する公開講座の開設などに至るさまざまな文化交流をよりいっそう活発化させていく所存であります。 そして、これらの課題を達成することを通じて、本学が世界と地域における自らの存在意義と役割をより高めていけるよう努力と研鑚を惜しまないということを最後に申し上げながら、本日の基調報告とさせていただきます。 ありがとうございました。(朝大助教授 慎栄根) [朝鮮新報 2006.12.26] |