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朝鮮大学校創立50周年記念シンポジウム 「地域と世界」に開かれた大学へ

「胸襟ひらいて交流を」

 朝鮮大学校創立50周年記念フェスティバル「体感! あなたのとなりのコリアンWORLD。」が11日、同校(東京都小平市)で行われた。チョゴリファッションショーや記念公演、朝鮮料理、朝鮮語会話レッスン、ポジャギ教室などの体験コーナーなどさまざまな企画が催されたなか、記念館講堂では「『地域社会と世界』から見た朝鮮大学校の50年と未来」のタイトルで記念シンポジウムが行われ、約160人が参加した。シンポジウムでは朴三石・同校政治経済学部教授が司会を務め、慎栄根・同校教育学部助教授が基調報告を行った。つづいて、百瀬宏・津田塾大学名誉教授、田中宏・龍谷大学教授、久慈正一・元法政大学第二高等学校教諭、下羽友衛・東京国際大学教授、野崎耕一・小平ユネスコ協会会長、芮達洙・朝大国際交流委員会委員がそれぞれの立場や視点から朝大の今後の展望について多角的で示唆に富む発言を行った。

幅広い文化交流を

 「朝鮮大学校の50年の歩みと未来」というテーマで基調報告を行った慎助教授は、朝大は在日朝鮮人にとって単なる学問習得の場のみとしてではなく、その存在の歴史的性格から提起されるさまざまな矛盾や課題を解決する「民族教育の最高学府」として機能してきたと指摘した。そして、自らの独自性を活かし、▼世界各地に居住する朝鮮民族を結ぶネットワークの中心、▼北南朝鮮の統一に向けた交流の拠点、▼朝・日の相互理解を深める友好のかけ橋としての役割を担っていくと述べた。また、地域では「地域密着型」の大学を目指し、学園祭や各種ボランティア活動などの地道な草の根交流や朝鮮問題に関する公開講座の開設などのさまざまな文化交流をいっそう活発にしていきたいと強調した。

「未来への投資」

シンポジウムには日本の市民や学生ら約160人が参加した

 2年前から同校で学外講師として世界近現代史の講義を行っている百瀬氏は、「自分の身近なところに住んでいる人々から理解を得られなくては、普段接触のない諸外国から理解を得られるはずもない」としながら、地域交流が持つ重要性を訴えた。また、「在日の人たちと交流することは、私のような日本人が、民族ということを真剣に考えることのできる大事な機会」だと語った。

 民族教育の権利をめぐって発言した田中氏は、朝鮮学校の教育をブラジル人学校やインド人学校などの外国人学校と比較しながらそれぞれの特徴について述べた。また、04年に静岡県が外国人学校への各種学校申請基準を緩和したことなどを例にあげながら、朝鮮学校が切り開いてきた教育権利の成果の恩恵を現在ニューカマーたちが受けていると評価した。

 久慈氏は朝大や朝大生と自身の間に結ばれた50年にわたる友誼と信頼を温め、これからも力を合わせて行きたいという思いで今日この場に出向いたとしながら、朝大校舎が小平に建設された59年に都内から朝大の筋向かいに引っ越してきた当時の様子や、美濃部亮吉・東京都知事らと共に朝大認可に向けて奮闘した日々をふり返った。

 02年から同校政治経済学部とのゼミ交流を実施している下羽氏は、青少年交流は「将来の国益につながる未来への投資」だと述べ、朝大との学生交流の意義について語った。同氏は第1に、日本国内における在日朝鮮人社会との関係改善に寄与すること、第2に、朝・日関係改善にもこのことが影響を与えていくだろうということ、第3に、交流を通して育成される人的資源が長期的に朝・日関係のみならず、北東アジア地域の平和に貢献することなどを指摘した。

 野崎氏は、朝大生と近隣住民の間で起こったさまざまなエピソードや、自身が朝大と交流をもつようになったきっかけについて紹介した。参加者らに「互いに胸襟を開いて交流していこう」とよびかけた。

将来の展望示唆

 芮氏は、小平をはじめとする地域社会で朝大がどのような役割を担うべきかについて述べた。同氏は近年行ってきた地域に根ざした活動の拡大、文化交流の意義、地域住民としての役割について強調しながら、大学施設をオープンにしてさまざまな人々が気軽に利用できるように努めたいと述べた。さらに、学園祭など特別な機会にのみ行われてきた公開講座を年間を通した定期的な連続講座にすること、同校博物館見学のシステムの簡素化することなどについて述べ、互いが異国人同士ではなく同じ地域の住民、「仲間」として向き合えることが大切だと述べた。

 司会の朴氏は最後に、今回のシンポがこれまでの朝大の歴史にない画期的なものとなったと評価しながら、朝大での教育の意味をふり返り、地域と世界に開かれたキャンパスとして新たな50年に向けて踏み出していきたいと力強く語った。(呉陽希記者)

[朝鮮新報 2006.11.20]