〈教室で〉 京都中高 体育 金政浩先生 |
心と体を鍛えることが使命 「体育の授業は楽しい」 「おもしろい先生」 京都朝鮮中高級学校では、体育の授業が嫌いだと言う生徒を探すことができなかった。一般的に、どの科目でもあることだが、体育ほど生徒たちにとって得手不得手がはっきりと分かれる科目はないだろう。 「体育の授業を通して身体能力を高め、生徒たちの心と身体を鍛える。身体を鍛える過程、努力が精神力の強化と自分はがんばっているのだという自信につながる。同時に自分の身体に興味を持つようになる」と、金政浩先生(32)は語る。そして「いつまでも直観教授であり続けたい」と笑った。 成長確かめる「カエル」
「さあ、『カエル』をやってみよう」 「カエル」とは、蛙のように座り、両腕を地に付け足を上げる動作で、その格好からこの名が付けられた。 「カエル」は、バランス感覚を養い体を維持する基本動作で、すべての運動の基礎になりえると、金先生は積極的に授業に取り入れている。 この運動は自分の身体に対する理解を深めることができ、どんなときでも練習可能だと金先生は話す。日常的に反復練習する努力、それにより昨日の自分より成長した今日の自分に出会うことで、健全な肉体と精神が培われていくと説く。 金先生は、京都中高の週20時間のすべての体育授業を受け持ち、すべての生徒の成長を授業を通して「目撃」している。そこで、一貫して繰り返される「カエル」。その姿勢、維持時間などを見るだけで生徒たちの発達と練習成果を見通すことができる。「カエル」は生徒たちの「成長」と「努力」の象徴でもある。 毎日毎日が勝負
「体育の授業はその日その日が勝負。すぐに結果が出る」と語る金先生。「評価」で重視するのはそれぞれの「成長」と「努力」だ。それを最大限に引き出すためには教員の万端の準備が不可欠だと、授業開始の1時間前から生徒たちを迎える準備を始める。体育館や運動場の整備、器材の運搬も黙々とこなしていく。 金先生の授業は、おもに中級部では基礎的な運動、高級部では球技が取り入れられている。 「これは生徒たちが将来、同胞社会に出たときを想定してのこと」で、先生の頭の中にはすでに、卒業生たちが同胞とともにサッカー、バレーボール、バスケットボールなどで汗を流す姿が描かれている。 「野球少年」が教師に
「野球少年」だった金先生は運動が好きで、朝鮮大学教育学部体育科(当時)に入学した。 「それまで体系的で専門的な体育授業を受けたことがなかった」金先生に衝撃を与えたのは、教育実習の生徒たちに専門的な運動理論を持って、身体の構造と可動域に基づいて行われた高度な参観授業であった。このとき金先生は、「授業とはさせることではなく、教えること」なのだと強く思うようになった。 こうした体験が、金先生を体育教員への道に導いた。そして、念願の教員になった今では、大学で学んだ体育理論をより確実なものにするため、参考書、インターネットなどを通じて新しい情報を収集することに余念がない。「手本は自身」だと言い、いつも生徒たちの「模範」でなければと、絶え間なく理論学習、実技向上に努めている。 「実技、いつまでも」 新任当時は「威厳」を求めるあまり「怖い教師」であろうとしたが、今は生徒たちから「理解のある先生」と呼ばれている。「威圧的な態度で生徒たちに臨んでもうまくいくはずがない。生徒たちの目線で、心で接するとき、初めて通じ合えることを担任を受け持つようになり痛感した」。 金先生は「実技はいくつになっても続けたい。これは体育教師の使命」と述べ、たくさんある夢のひとつをこう披露してくれた。 「有能な生徒を育て、いつか国家選手を生み出したい」(鄭尚丘記者) ※1974年兵庫県生まれ。朝鮮大学校教育学部体育科(当時)卒、95年から京都朝高体育教員に。現在は週に20時間の授業を受け持つ傍ら中級部3年2班の担任、中級部のバスケットボール部監督、芸術体育分科長、教務部副部長など精力的な活動をしている。 [朝鮮新報 2006.9.29] |