そこが知りたいQ&A−「薬事法違反」事件、本当なの? |
医師から薬買った事を罪に 「教唆」「生化兵器転用」と歪曲 既報のように、警視庁公安部は11月27日、東京都世田谷区に住む在日同胞女性(74)が祖国を訪問した際に自らの病気治療と健康管理のため必要不可欠な医薬品、「強力モリアミンS」点滴薬などを近所の医師から購入したことが「薬事法」の「医薬品無許可授与」と「教唆」容疑に当たるとの口実で同胞女性の自宅、総連東京都本部をはじめ7カ所を同時に強制捜索した。今回の事件の真相をQ&Aで見る。 Q 新潟税関が、祖国訪問時に持参しようとした薬の携行を不許可にしたのはなぜか。どういう経緯だったのか。 A この同胞女性は、今年5月19日から30日まで、「万景峰92」号で祖国を訪れた。女性は数年前、甲状腺ガンと婦人病を患って大手術を数回しており、祖国を訪問する際には薬を携行してきたが、税関検査でこれまで問題になったことは一度もなかった。
しかし今回、新潟税関当局は、祖国訪問新潟出張所職員に対し、女性の荷物の中に栄養剤が入っているので、本人に税関に出向くよう指示した。出港前日、女性が税関を訪れたところ、税関職員は、医師の処方せんがないので栄養剤の携行を許可できないと通告してきた。 女性は、「祖国訪問中に自分が使うもので、医師から買ったものだから何の問題もないのではないか」と主張したが、結局薬の持参を断念して指示どおり税関当局に託した。 出港当日、税関職員は栄養剤60パックのうち、5パックだけは携行しても構わないと女性に戻し、残りの55パックは税関職員から託された新潟出張所職員が女性の自宅に送り届けた。 結果的には新潟税関当局も、人道上の配慮から女性が栄養剤を持っていくことを許可した。 「薬事法違反」容疑とは相入れない矛盾した対応で、別の意図を持って事件をねつ造したのではないかということがうかがわれる。 Q 同胞女性が持参しようとした薬は「大量」で、「生物化学兵器にも転用可能」だったと報道されている。 A 女性は今回「強力モリアミンS」60パック(1パック200ミリリットル)を持参しようとした。これは以前、祖国訪問した際に体調を崩して入院し、2カ月以上滞在せざるをえなくなった経験があるからだった。 「強力モリアミンS」は、アミノ酸補給のための栄養補給用輸液だ。医薬専門家は、「手術の前後に投与されるなど、ごく一般的に使われている栄養補給剤だ。この薬が生物化学兵器に転用可能だというなら、すべての薬が可能になってしまう。まったく根拠がない」と指摘している。 また、同時に持参しようとした「強力ネオミノファーゲンC」注射薬は、肝機能異常を改善することを目的に使用されるポピュラーな肝臓治療薬だ。「被爆した核技術者の治療に使用」されると、これも核実験、開発と結びつけるのは事実のわい曲だ。 ちなみに、今回の事件を報じた南朝鮮の連合ニュースは、問題になっている薬とは、国際救護団体などでも難民支援などのため提供する医薬品だと指摘しながら、「今回の捜索は対北制裁の延長で、北の指導部を圧迫しようとする意図が強い」と分析した。 Q 事件に在日本朝鮮人科学技術協会(科協)が深く関与したようにも報じられている。 A それは同胞女性の世帯主が科協東京支部顧問(非常勤)というだけで、何の根拠もないでっち上げ報道だ。 今回も、総連の傘下団体の科協を結びつけることによって、総連が「薬事法違反容疑」に組織的に関与しているかのような虚像をつくり、総連が「犯罪組織」であるかのようなイメージを植えつけた。 日本のメディアはまったく根拠のないデタラメな報道をしながら、世論操作を行っているのだ。 Q 「教唆」容疑とはどういうことなのか。 A 「教唆」とは、他人をそそのかして犯罪を実行する決意を生じさせることを意味する。もっぱら故意による場合を想定している。 しかし女性の栄養剤購入と祖国訪問の経緯をみると、そこには公安当局がいうような女性が医師を「教唆」したという事実は一切ない。 女性は、医師から薬を購入したことが罪になるとは思いもよらなかったと語り、自分の体調を心配して人道的見地から医師が栄養剤を提供してくれたと話している。 Q では、「薬事法違反」で総連東京都本部などを強制捜索した根拠はどこにあるのか? A 根拠などない。そもそも、総連東京都本部などはまったく無関係だ。だから、政治弾圧だと激しく反発している。 今回の「薬事法違反容疑」とは、あくまで医薬品の購入、販売に関わることであり、同胞女性と医師間の薬の購入、譲渡に総連組織はなんら関与していない。 しかし公安当局は、同胞女性の自宅と、同胞女性の祖国訪問事業を手助けしたとして、女性の居住地域を管轄する総連渋世支部と同東京都本部、祖国訪問新潟出張所と祖国往来記念館、倉庫、さらには新潟の運送業者の会社と倉庫まで強制捜索した。 「日本警察当局の総連組織と同胞女性に対する不当な強制捜索を糾弾する在日朝鮮人中央集会」(11月30日、東京)で報告した総連中央の南昇祐副議長は、今回の弾圧には重大な企図があると厳しく非難した。そして、弾圧は日本政府当局が対朝鮮制裁措置をどうにかして正当化しようとしてなされたものであり、また日々高まる制裁への非難と人道主義の船である「万景峰92」号の入港再開を要求する声を抑制し、「万景峰92」号の入港禁止の長期化を狙ったものだと指摘した。 心ある日本の市民らも、人道問題をも利用した日本当局の総連弾圧を強く非難している。 総連は今後、あらゆる政治弾圧に対し、団結した力で闘い、組織と同胞を最後まで守り抜く決意を固めている。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2006.12.15] |