大阪・同胞高齢者年金訴訟 訴え棄却、不当判決 大阪高裁 |
「これが民主主義か…」 外国籍などを理由に無年金状態に置かれている大阪府内の在日同胞らが日本政府に対して損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、大阪高等裁判所は15日、原告側の訴えを棄却した。 傍聴席から嘆き
わずか30秒ほどの出来事だった。「これが民主主義か…」と、関係者らで埋められた傍聴席から嘆きの声が漏れた。第4回控訴審(7月5日)で、弁護側は「この悲惨な状況をいかに裁判官が理解するかが問題だ」と強調していた。控訴から1年半、提訴からは3年もの歳月が流れていた。 日本の植民地支配によって日本での生活を余儀なくされ激しい民族差別のなかで生き抜いてきた原告ら5人は、日本人と同じように税金を払ってきた自分たち在日コリアンが年金をもらえないのはおかしいと2003年11月に提訴した。 「今日の糧さえままならない。どう生きていけばいいんだ」 訴えはまさに死活問題だった。 しかし2005年5月25日の大阪地裁判決は、原告らの「在日韓国、朝鮮人」という立場におかれた歴史的経緯まで否定し、訴えを棄却する不当なもので、棄却理由さえ述べられなかった。 原告らは質問に答え、国が行った過ちを認め、自分たちの残された人生を安らかに暮らせるようにして欲しいと控訴、同年9月に原告の一人が亡くなる悲しみを乗り越え闘い続けてきた。 「お粗末な判決」 旧植民地出身高齢者の年金補償裁判を支える全国連絡会主催による報告集会(15日)が大阪人権センターで開かれ、弁護団が判決の報告を行った。 丹羽雅雄弁護士は「憲法14条」「国際人権規約」「国籍条項」の3つの争点について言及し大阪高裁の判決内容について説明した。 弁護団は国民年金法の不平等点について述べ、「国際人権規約を違反するお粗末な判決」と断じた。そして「日本国籍所有者でなければ、人間として認められない社会である。民主主義の根幹が問われている」と強調した。 上原康夫弁護士は「人として生きていけるかが問題」だと「第4の争点」である損害補償について述べた。 原告、当事者らは「裁判官は国を守るのが仕事なんだな。私たちは守られた経験がない」としながら、「それでも訴えることに意義がある。上告する」と信念を語った。 ※ ※ 大阪高裁の判決は「国民年金法制定当初において、外国人、また、控訴人らのような在日韓国、朝鮮人を対象としなかったことをもって憲法14条に違反するものとはいい難い」「憲法、国際人権規約上保障されている権利を違法に侵害することが明白であるとはいえない」「国会(議員)に控訴人らが主張する立法的義務までは認め難く、…控訴人らの主張は採用に由ないもの」(判決文から)とする不当なものだった。 [朝鮮新報 2006.11.20] |