そこが知りたいQ&A−総連関連施設への固定資産税等の課税の根拠はなに? |
拉致、ミサイルを口実に 総連の「公益性」「外交代表部格」を無視 総連関連施設に対する2006年度の固定資産税について、全国で約3分の2の関係自治体が減免する方針であることがわかった。昨年度、税減免措置を実施した自治体の約90%が今年度も継続する。一方で、「ミサイル問題」を口実に一方的に課税を決めた自治体もある。課税騒動の動きについて解説する。 Q どう評価するのか。 A 拉致問題などを口実に2003年に東京都が課税に踏み切ったことから、減免見直し(=課税)の動きが広がった。以降、一部の日本政府高官や政治家、「救う会」などの団体が、減免措置を見直すよう関係自治体に働きかけた。 この流れのなか、ほとんどの自治体が減免継続することの意義は大きい。多くの自治体、首長らが課税、減免の判断を平等に、厳正に行っていること、総連と関連施設が「公益性」を有していると認められたことの証となるからだ。 Q なぜ減免と課税に判断が分かれるのか。 A 1972年、当時の美濃部亮吉・東京都知事が朝鮮中央会館を「事実上の大使館」とみなし非課税として以来、地方自治体でも「領事館に準ずる施設」「公民館類似施設」とみなし、関連施設に対して減免措置を講じる動きが広がった。 税減免は自治体の条例に基づいて実施される。本来は総連の活動内容と実績、施設の使用状況を踏まえて、平等に、厳正に判断されなければならない。 だが、一部の自治体では、「拉致問題」や「ミサイル問題」を無理やり総連と関連付け、「市民感情にそぐわない」などを口実に首長や議会の独断で課税、減免撤回が断行された。 Q 裁判所判決も分かれたというが。 A 熊本市が熊本朝鮮会館の固定資産税及び都市計画税を一部免除したのは違法として、「救う会熊本」のメンバーが幸山政史市長に減免の取り消しを求めていた訴訟の判決(2005年4月)で、熊本地裁は「(朝鮮会館が)公益性を備えた公民館類似施設に該当し、固定資産税等の減免措置に違法性はない」として、原告の請求を棄却した。 しかし、控訴審で福岡高裁は一審判決を覆し、「熊本朝鮮会館はもっぱら朝鮮民主主義人民共和国の国益のため、在日朝鮮人の私的利益のための活動しか行っておらず、日本社会一般の人々の利益になるような活動は行っていないため、免税は適当でない」とし「減免措置は違法」とする不当な判決を下した。熊本市はこれを不服とし上告した。 現在、函館、新潟、東京などで固定資産税をめぐる裁判が行われている。 Q 日本政府が課税するよう圧力をかけていると聞くが。 A 日本総務省は4月に続き、朝鮮のミサイル発射訓練直後の今月6日にも「(総連関連施設の)公益性の有無などを厳正に判断すること」とし減免措置の見直しを関係自治体に通達した。二度にわたる異例の通達は、自民党や一部の政治家の言動などから「ミサイル発射」に対する「対抗措置」「制裁の一環」であることがうかがえる。 事実、「ミサイル発射」を口実に減免措置取り消しの方針を明らかにした横浜市の中田宏市長は記者会見で、「総務省からも通知があらためて来ているということも含めれば、国全体で言うところの経済制裁という中にあたるのかもしれない」と述べている。 Q 課税を不当だとする理由は。 A 主に3点ある。まず@総連の活動の公益性を否定していることだ。 各地の朝鮮会館では各種学習会や講演会、サークル活動、生活相談、日本市民や団体との交流、図書閲覧など、在日同胞とともに日本人のための公益活動も幅広く行われている。福岡高裁判決はこれらが日本の公益に資さないと断定している。横浜市長のように、この判決をそのまま引用して課税判断する首長もいる。 次にA総連が朝鮮の大使館、領事館的な地位にあることを無視している点だ。 総連が「朝鮮の外交代表部格の使命と役割を遂行している」ことは、朝鮮外務省が認めている。また、各地の会館では在日朝鮮人や日本の住民らが訪朝する際に必要な各種渡航手続きも行われている。 さらにB平等取扱い原則(憲法14条)に違反している。他の在外公館、「公民館類似施設」と同じような活動、業務を行っているにもかかわらず、総連だけに課税している。 Q そもそも、なぜ今になって執ように「厳正判断」を求めるのか。 A 日本政府は拉致問題、「ミサイル問題」などを口実に、朝鮮と総連に対して強硬な姿勢を取っている。とくに、朝鮮のミサイル発射訓練直後、制裁措置として「万景峰92」号の入港禁止など9項目の制裁措置を決めた。固定資産税等の課税騒動は、朝鮮と総連のイメージを曇らせ総連と在日同胞を離間させようという政治的弾圧の流れのなかにあると言わざるをえない。過去の清算や民族教育権保障の問題など、「何かと目障りな」存在である総連を財政的に追いつめようという日本当局の魂胆が見える。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2006.7.29] |