在日同胞高齢者、障害者無年金問題 実態は在日朝鮮人差別 |
支援者「日本人と同じでも足りぬ」、厚労省「日本人とのバランス欠く」
「在日外国人だけに経過措置を設けることは、日本人とのバランスを欠くことになる」−一部世代の在日外国人障害者が無年金状態に置かれている問題に関する厚生労働省の認識だ。この「バランス」を欠いた考え方が、2重3重に差別されてきた人たちをさらに苦しめている。「オウム返し」を繰り返す厚労省側の誠意ない対応に当事者らの怒りは頂点に達している。 日本の国民年金が任意加入だった時期に未加入のまま障害を負い、障害基礎年金を受け取れなかった当時の学生や主婦ら無年金障害者(特定障害者)に対して「特別障害給付金」を支給する法律が2004年12月に成立し、昨年4月から施行された。 同法の審議過程で、無年金の在日外国人についても支給するよう求める声が高まったが、附則に「今後検討」と付け加えられただけで、実質排除された。以降「検討」された様子はまったくうかがえない。むしろ後退していると指摘する人もいる。 日本政府は、年金制度など社会保障を定住外国人に適用する際の判断基準として「バランス」という考え方を持ち出すことがある。 たとえば、佐渡島志郎外務大臣官房参事官(当時)は3月30日の参議院厚生労働委員会で「在日の外国人の方にのみ無拠出制の給付を行うのはどうだろうかというような、国内での同例の日本人の方との比較のバランスの問題とか、いろんな問題について慎重に検討をする必要があると伺っている」と答弁した。 そもそも、在日外国人は年金制度から排除されており、「加入したくても加入させてもらえない」「(掛け金を)払いたくても払えない」状態にあった。にもかかわらず、「加入せずにいた人」を救済し在日外国人を外した。これこそバランスを欠いていると言えるのではないか。 制度の矛盾明らか 22日、無年金当事者と厚労省職員の話し合いの場に参加した金順喜さんは「(バランスを欠くことになるという厚労省の見解は)在日同胞を差別しているとしか聞こえない。これまでも『年金法』を盾に差別してきた」と厳しく指摘した。 無年金状態にいる在日外国人のほとんどは在日同胞だ。つまり、厚労省の説明は、「在日朝鮮人を救済しない状態がバランスのとれた状態だ」と主張しているように受け取れるのだ。 年金制度における恣意的な判断は制度や法律の矛盾をはっきりと表している。 これまでに沖縄や小笠原出身の日本人、中国残留邦人たちには経過措置がとられたが、そのときも在日外国人は排除された。 日本人だからという理由も成り立たない。20歳になる前に障害を負った短期滞在の留学生にも障害基礎年金が支給されているからだ。 また、年金の支給には税金が投じられる。しかし、日本人と同じく税金を納めてきた在日外国人、在日同胞の一部がその恩恵を受けられずにいる。 無年金の在日同胞らを支援する日本人らは「在日朝鮮人に限定した議論がないこと自体おかしい」「なぜ日本に朝鮮人がいるのか、彼らがどのような処遇を受けてきたのかを考えると、日本人と同レベルの扱いということだけでも足りない」と指摘する。 「検討」から20年以上 日本の国民年金制度は創設時(1959年)に国籍条項を設け、在日外国人を排除した。82年、日本は「難民条約」批准に伴い「年金法」を改正、国籍条項を撤廃した。しかし、「1982年1月1日時点で20歳以上のすでに障害を有する者」「1986年4月1日時点で60歳以上の者」は救済されなかった。 現在、700以上の自治体では、在日外国人に対する緊急支援として特別給付金が支給されている。が、あくまで「国が制度化を図るまでの過渡的措置」であって、財政難も伴い低額だ。「日本政府が行うのが筋」と支援を拒む自治体もある。 日本政府が批准している「難民条約」には、内外人平等の原則、つまり社会保障において「自国民に与える待遇と同一の待遇を与える」ことが明記されている。 「難民条約」批准に伴う法改正以降、日本政府は「検討する」という言葉を幾度となく繰り返してきた。今まさにその結果が求められている。 無年金の同胞障害者、高齢者の多くは働くこともできず、厳しい生活を余儀なくされている。なかには「収入ゼロ」の同胞もいる。医療制度、介護保険制度の改悪はさらなる負担を強いている。日本政府は問題の重さを認識し、一刻も早く解決すべきだ。(李泰鎬記者) −各地の同胞無年金訴訟− ●京都、障害者 2000年3月、京都地裁に提訴 ●京都、高齢者 2004年12月、京都地裁に提訴 ●大阪、高齢者 2003年10月、大阪地裁に提訴 2005年5月、棄却。大阪高裁に控訴 [朝鮮新報 2006.5.30] |