医協第29回学術報告会 名古屋で活発な論議 |
学校保健分科会開催 子どもの健康に力点 在日本朝鮮人医学協会の第29回学術報告会が11月12日、名古屋市内のローズコートホテル名古屋で開催され、李大国・在日本朝鮮人医学協会会長はじめ、在日の医療人、医療系学生および朝鮮学校保健担当教員など約150人が参加した。例年のように、分科会・ランチョンセミナーおよび全体会(性教育に関する兵庫県朝鮮学校保健活動報告、特別講演2題「脳外科医と国際交流」「朝鮮興南からみた水俣病について」)などで構成され、盛会のうちに幕を閉じた。 12の演題
分科会では医科、歯科、看護、東医柔整、介護の5つに加えて、今年は新たに学校保健についての分科会が開かれた。この分野に関しては昨年の同報告会において講演会形式で初めて扱われたところ、継続の要望が強かったため、今年も分科会という形式で続けられることになった。 医科分科会においては内科、脳神経外科をはじめとして12題の発表があり、活発な討論が行われた。看護分科では7題の発表があったが、共和病院(大阪)からの発表がほとんどで、今後は他施設からの積極的な演題発表を期待したいところである。歯科および東医柔整分科では、テーマをしぼって、気心の知れた者同士で和気あいあいと講演と討議が進められた。 今日の医療情勢を語るうえで外すことのできない問題となっている介護については、今回も介護分科という独立した会として発表と討論の場が設けられた。なかでも在日コリアン高齢者の介護は単に医学的なものだけではない問題をはらんでおり、今後も活発な活動が期待される。 定期健診の開始
2004年に朝鮮学校初級部用の保健教科書が新たに編さん発行されたのを機に、これまで保健教育が十分に行われていたとは言いがたい状況を改善しようという機運が高まった。これに応えるべく、当協会としても学術報告会で学校保健の分野に注目するようになった。分科会でははじめに「2006年度ウリ学校保健統計」に関する報告があった。実はこの年度からは日本文科省による新しい学校保健規定に沿って定期健診が行われたという経緯がある。こういった試みは朝鮮学校が日本教育基準法第一条校に準じた処遇改善を要求していくうえでの新たな根拠づけとなりうると考えられる。 つづいて、医学協会側から2つの演題発表が行われた。ひとつは、学校や保育園、幼稚園などの集団生活の場では伝染病の流行を起こしやすい、感染症の感染経路、様式およびその予防についての知識を会得する必要がある、こういった観点から「学校におけるインフルエンザ、結核および食中毒について」と題して、最近の統計資料を紹介しながら発表があった。ふたつ目は、歯科的啓発として、「ウリ学校の先生が知っておきたい子どもの歯の健康」と題して、実例写真を駆使しての発表があった。ここでも学校が歯科保健とそれに伴う包括的健康教育を行う格好の場であることが強調された。
さらに続けて、朝鮮学校教員経験者で現在大学の社会福祉学科に学ぶ演者から、障害児教育を行ううえで求められているものは何なのか、まず総論的な提言があった。また、民族教育現場の教員からは自閉症児に対する実践的取り組みの報告と問題提起があった。最後に、保健教科書と指導要綱をいかに活用するかについて、保健教科書を編さんしている側から総合的な解説があった。 今回は残念ながら学校関係者の参加が少なかった。次回もできれば学校保健分科を継続したいと考えているので、協会会員に限らず、この分野に興味のある人の積極的参加を呼びかけたい。(金秀樹、在日本朝鮮人医学協会東日本本部会長) [朝鮮新報 2006.12.7] |