第11回同胞女性学習会 「アジア女性資料センター北コリアスタディーツアー」 丹羽雅代さんが訪朝報告 |
日朝関係の平和的な再構築を 「脅威煽るだけでは何も解決しない」 今夏、「アジア女性資料センター北コリアスタディーツアー」に参加した丹羽雅代・同資料センター運営委員長を講師に迎えた「第11回同胞女性学習会−女性のパワーで真の和解の実現を−こんなときだからこそ、行ってきた北コリア」が10月24日、東京・表参道にある東京ウィメンズプラザ視聴覚室(主催=在日本朝鮮人人権協会・男女平等推進部会)で開かれた。 歴史的視点を持つべき
同ツアー参加者らは、8月5〜9日までの朝鮮滞在中、日本軍「慰安婦」だった金英淑さん、郭金女さん、強制連行被害者で被爆者の金竜福さん、朴文淑さんらと面会。当時の体験を聞いたのをはじめ、平壌市内や板門店などを参観した。 丹羽さんは、なぜ、この時期に訪朝したのかについて、次のように説明した。 「一つは日本軍性奴隷制の犠牲者であるハルモニたちの話を聞きたかった。朝鮮のハルモニたちは、北にいるというだけで、同じように被害を受けたほかのハルモニ以上に、日本政府からはもちろん、人々からも関心を寄せられにくい状態にあった。そのハルモニたちの話を聞くことは、国交がない中で、限られたルートを通して、これまでごく一部の人々が試みてきたにすぎない。だからこそこの機会に実際に会い、話を聞きたいと考えた」と説明。さらに、日本中にあふれる朝鮮についての情報が「食糧危機説、マスゲーム、ミサイルなど非常に限定的である」と感じ、東アジアの平和を強く望む者として、現在の朝鮮の等身大の姿や人々の様子を知ったうえで、日本の加害責任や現在の政治状況について考察を深め、過去の歴史への視点をもう一度問い直したかったと述べた。 過去棚上げするな
学習会ではツアーの訪朝ビデオを観たあと、丹羽さんの報告が行われた。同氏は現在の日本における拉致、ミサイル、核問題をめぐる論調について「自らの過去を棚上げにしたもので、よくない」と指摘しながら、「日本で流布される北のイメージはいかに悪い国か、いかに恐ろしい国かということばかりで、日本と朝鮮半島の歴史的視点はバッサリ抜け落ちている」と語った。 また、元「慰安婦」の金英淑さんたちと面会した際、「日本政府はかつての植民地支配と戦争によって朝鮮の人々を痛めつけた歴史に対して、謝罪も賠償も拒んで、隣国同士の正常な関係を作ってこなかった。日本政府は私たちの死を待ち望んでいる」と強く非難したと語った。
平壌滞在中の8月7日、元「慰安婦」の朴永心さんが死去したことが知らされた。「44年、中国雲南省拉孟で妊婦姿で見つかった朴永心さんは、2000年、東京で開かれた女性国際戦犯法廷にも参加された。耐えがたい苦痛を抱えて生きてこられたが、ハルモニは日本政府から一片の謝罪の言葉も受けることなく亡くなってしまった。恨を晴らさないまま亡くなったと思うと、非常に辛い。日本と朝鮮の関係を再構築するうえで、ハルモニたちの存在を決して忘れてはならない」と強調した。 さらに板門店を訪ねた感想について、「米軍と厳しい軍事的な対峙を続ける今の状態は『撃ち方やめ』の状態にすぎない。この地域に一時的ではない恒久平和をもたらすには、停戦協定ではなく平和協定が結ばれなければと思う」と指摘し、日本における核、ミサイル騒動について次のように語った。
「朝鮮の核実験後、日本では一部の政治家が核武装論を口にしたり、先制攻撃論が台頭するなど、この問題を政治、軍事的に利用しようとする動きが活発だ。 また、米国主導の北朝鮮船舶臨検に日本が参加、支援する動きもある。臨検には武力行使を伴う可能性があり、戦争の危機を助長することになる。現在、米国は7000発の核弾頭を持ち、これまで何千回もの核実験をして広島、長崎では実際に核の実践をした国ではないか。 しかし、日本国内の報道は、北の脅威をあおる『タメにする報道』ばかりが目立つ。こういう中で、私たちは、そうした歪みを見抜く力を持ち、日朝間の平和と関係改善に何ができるかを考えねば」 百聞は一見に如かず 丹羽さんは、今回の訪朝がツアー参加者にとって、「百聞は一見に如かず」のよい体験となったと述べ、ある参加者が平壌のホテルでワンピースをクリーニングに出したとき、ボタン一つが潰れたために、服にあわせたボタンを街中探し出して、全部を取り替えてくれた従業員の話などについても紹介した。 また、ミサイル発射訓練(7月5日)のあと、男性ツアーは軒並み中止となったが、この女性ツアーが予定通り訪朝したことで、平壌の関係者から「やはり男性ばかりはダメです」といわれた話を披露すると、学習会は笑いに包まれた。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2006.11.6] |