〈同胞法律・生活センターPART3 C〉 生活保護 |
センターには、生活保護に関連する相談あり、高齢者、母子家庭、病気やケガで失業した人などさまざまな同胞から相談が寄せられています。今回は生活保護に関連した相談事例について紹介します。 日本社会では、前政権による「骨太の方針」や「痛み分け」の改革により、社会保障、社会福祉が大幅に切り捨てられようとしています。介護保険制度や老人医療制度の改正、そして障害者支援費制度における一律1割負担の導入など、とりわけ高齢者や障害のある人たちが大きな経済的負担を強いられています。 ここ最近、生活保護に関連する新聞報道が目立ちます。保護を受給できず餓死した高齢者や、福祉事務所で水道やガスが止められていることを伝えても、「はめている時計を売るように」と申請用紙もくれないなど、人権侵害どころか生死にも関わる深刻な問題点が指摘されています。
日本政府は、社会保障費削減のために生活保護に係る費用も削減しようとしています。そのため、まずは高齢の受給者に対する老齢加算の段階的廃止や母子家庭への母子加算が廃止されることになり、また同時に、保護費削減のための水際作戦として、申請の最前線である福祉事務所では、被保護者数を減らすべく申請を受理しないためのさまざまな対応がとられているようです。 在日同胞のなかにも生活保護を受給する人が増加しています。表にもあるように、同胞が多く住む大阪市生野区では2005年の同胞受給者数は2000年の約2倍になっています。長引く経済不況によるリストラ、解雇、離婚による母子家庭や高齢者の独居世帯の増加など、生活に困る原因には日本社会と同様の背景があるようです。しかし私たちの場合、民族差別や国籍条項などにより、もともと経済的、社会的基盤が脆弱であるうえ、「勝ち組、負け組」や「自己責任」などの言葉に象徴されるように格差が広がる今の日本社会では、貧困はすぐ隣にある身近な問題と言えるでしょう。 Q 長年の夫の暴力に耐えかねて子を連れて家を出ました。現在、生活保護を受けて暮らしています。夫が私たちの居場所を探し回っているらしく、見つからないかとても心配です。どこか別のところに引っ越したいのですが、引っ越す際、それに係る費用は別に受給することができるのでしょうか? この事例とは異なりますが、家主の都合によって明渡しを求められて引っ越しをせざるをえないような場合は、引っ越しの費用は当該家主に請求ができますので、生活保護に係る費用としては支給されません。 すでに述べたように、福祉事務所の職員の対応や生活保護制度の運用のあり方は、先頃行われた日弁連の人権擁護大会でも取りあげられています。「息子や娘に援助してもらいなさい」「自宅を処分しなさい」などと窓口で言われることがありますが、民法上、子に親の扶養義務があるとはいえ、それは親の子にたいする扶養義務とは異なり、援助できるほどの余裕が子にある場合で絶対的な義務ではありません。また、自宅などの不動産がある場合でも、それを売却して得られる価値が大きい場合であって、処分価値が低く、またその人の自立を助長するうえで有効であるような場合は、必ずしも処分する必要はありません。 詳しくは当センターまでお気軽にご相談ください。(金静寅、同胞法律・生活センター事務局長) ※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429。 [朝鮮新報 2006.10.31] |