〈同胞法律・生活センターPART3 @〉 少子、高齢化で同胞社会も多様化 |
今、少子化が深刻な問題になっています。厚生労働省の統計では、合計特殊出生率(女性が一生に産む子どもの平均数)は1.25となっており、すでに超高齢社会に突入した日本にとっては、この少子化は社会を現役で支える生産人口(15歳から64歳未満)の減少に直結し、国の財源や年金、社会保障など諸制度の根幹に関わる非常に重要な問題として取り上げられています。 少子化の原因には晩婚、未婚、非婚化などさまざまな要因が考えられ、子を産む親世代人口の減少や、若い世代の子の生み方やライフスタイルなどが変化しているとも言われています。私たち在日同胞社会はどうでしょうか?
表@の出生統計から、父母ともに同胞、あるいは父母のいずれかが同胞である場合、その間に生まれた子の数は2000年以降の数年間で激減していることがわかります。ついでに表Aの婚姻統計をみると、同胞同士の婚姻、同胞と日本人の婚姻、いずれも件数は減少傾向にあります。しかし、同胞と日本人以外の外国籍との婚姻件数はわずかずつですが、増加しています。少子化そして晩婚、未婚、非婚化は私たち同胞社会にも少なからず当てはまり、また同胞社会の構成員も多様化していると言えます。
また、先ごろ発表された法務省・「在留外国人統計」によると、2005年末時点の特別永住者数は44万7805人となり、年々減少傾向にあります。同胞人口の減少と多様化、今後の同胞社会や在日朝鮮人運動のあり方を考えるうえで決して看過できない重要な問題のひとつでしょう。 開設以来同胞法律・生活センターには、6000件近くの相談が寄せられてきましたが、さまざまな相談を通して同胞社会の変化を実感しています。 同胞の相談もそのニーズも多様化する現在、同胞に固有の問題も随分と様変わりしています。これからまた始まる連載では、とりわけ若い世代からの相談を中心に、古いテーマでありながらも中身は新しいさまざまな事例を紹介していきます。今回は在留資格です。 Q 私は朝鮮籍で在日3世です。現在、フランス人の夫とフランスで生活をしています。来年の春に出産を控えていますが、生まれてくる子の日本における在留資格はどうなるでしょうか? 私と同じ「特別永住者」資格を取得できますか? A フランス国籍法は父母両系血統主義を採っているので子の国籍はフランスと朝鮮の重国籍となります。 日本における在留資格については、子が日本で生まれた場合は、父母のいずれかが「特別永住者」であれば出生届と同時に特別永住者資格の取得手続きができ、子は特別永住者資格を取得できます。しかし、海外で生まれた子の在留資格取得の手続きは複雑な上、多少のリスクが伴います。 最近はこの事例のように海外に生活の本拠を置く若い同胞も増えており、またこれとは反対に外国籍の妻が里帰りして海外で子を出産し、日本に連れてくるというケースもあります。このように海外で生まれた同胞の子の場合、日本における在留資格や日本に入国するにはどうするのかが問題となります。 子の父母が「特別永住者」資格を持っていても、子は「本邦(日本)で出生し、引き続き本邦に在留する…」(入管特例法第4条)には該当しません。 しかし、「…平和条約国籍離脱者の子孫で入管法別表第二の上覧の在留資格(永住者の在留資格を除く。)を持って在留するものは、法務大臣の許可を受けて、この法律に定める特別永住者として、本邦で永住を許可することができる。」(同第5条)によって、特別永住者資格を取得することができる扱いとなっています。 この事例では、子の生まれたあとに子のフランス旅券を取得し、とりあえず、「短期滞在」等の在留資格で日本に入国をし、そのあとに「特別永住者」資格の取得申請をすることになるでしょう。しかしこの場合、在留資格の諸手続は煩雑でしかも時々の「裁量」によることが多いので、できれば日本に戻って出産するのがよいでしょう。(金静寅、同胞法律・生活センター事務局長) ※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総聯本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429。 [朝鮮新報 2006.9.16] |