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民族に勝るものはない

 8月上旬、100日間の平壌駐在勤務を終え日本に戻ってきた数日後、南のある大手メディアの女性ディレクターから電話をもらった。「民間団体を中心に北の水害復興支援への世論が高まっているが、被害規模や現地の様子がよくわからない。被害地を直接訪れた人に番組内でインタビューしたい」との内容だった。

 被害地を1カ所、それもたった1日取材しただけの自分に話せることは限られていたが、「犠牲者1万人以上」などという現状とあまりにかけ離れた報道がなされていたこともあり、復興に少しでも役立つならと、申し出を受け入れた。

 その後、支援の輪は南ではもちろん中国や米国など海外同胞の間でも広がり、南当局も赤十字を通じた支援を決めた。

 水害復興支援の動きを含めた最近の北南関係を見ながら、「どんな同盟も民族に勝るものはない」という一句が頭をよぎった。金泳三元大統領の就任演説に出てくる言葉だが、演説を起草した人物が、当時の統一院長官を務めた韓完相・現大韓赤十字社総裁だ。

 大国に翻弄されてきた朝鮮半島の歴史を考える時、この言葉は強い説得力を持って迫ってくる。6.15共同宣言が発表され6年が経つだけに、当局間の対話が中断している現在の状況をもどかしく感じるのは記者だけではないだろう。

 前述の女性ディレクターから、後日再び連絡があった。「集まった金額は決して多くないが、同族を助けようという気持ちこそ大事」との彼女の言葉に納得。

 「もちろん私も募金しましたよ」。最後の一言に思わずうれしくなった。(相)

[朝鮮新報 2006.9.13]