今回は、解放直後、在日同胞映画人たちが必死の思いをこめて制作した「朝聨ニュース」の内容をみる。

　「朝聨ニュース」は１報から１３報まで出たという。４報までは朝聨文化部、それ以後は民衆映画社が制作した。番号の表記に「報」と「号」があるが資料によって異なる。朝聨３回大会報告の中では「号」となっている。「報」「号」はともかく、この映像記録は、当時の朝聨の考え方や在日朝鮮人社会の動きの一端を捉えた貴重な映像である。

　「朝聨ニュース」の１編から１３編（号）までをみると、その構成は多種多様であったといえる。内容的に見ると、�@朝鮮半島、極東裁判状況を含めた日本、世界の情勢、�A同胞の動き、朝鮮独立祝賀行事、出獄同志歓迎行事、帰国状況、解放記念行事、�B朝聨の活動、結成大会、第２回大会（臨時）、第３回大会などの朝聨の大会模様、朝聨の青年部、婦女部あるいは民青組織過程、生活権をはじめとする権利擁護活動などである。地域では、東京、三多摩、神奈川、千葉、埼玉、北海道、大阪、京都、兵庫、福岡など。

各報（号）の内容

朝聯文化部が制作した第３報

　各報（号）の内容を若干確認できていないものを含めて羅列する。残念ながら現在手元にある映像は音声がない。

　第１報〜マッカーサー司令官着陸／進駐軍入城／敗戦日本の現状／ミズリー艦上降伏調印式／原子爆弾の被害（広島）

　第２報〜朝聨全国結成大会（東京）／朝鮮独立祝賀大演奏会（東京）／出獄同志歓迎人民大会（東京）

　第３報〜朝聨第２回臨時全国大会（東京）／博多帰国同胞の状況（博多）／朝聨青年全国大会（東京）／朝鮮独立祝賀大運動会（横浜）／特報３．１革命記念人民大会（東京）

「朝聯ニュース」は５報以後、民衆映画社が製作した

　第４号〜対日理事会（東京）／戦争犯罪人裁判（横浜）／大阪布施支部婦女部結成大会（大阪）／蹴球シーズン開始（東京、大阪）／幣原内閣打倒人民大会（東京）

　第５号〜海南島脱出（東京）／読んで使って学ぼう（大阪）／第１７回メーデー（全国）

　第６号〜極東裁判開幕（東京）１、志願兵、２、侵略戦争準備、３、強制労働、４、侵略開始、５、非人道的暴挙、６、裁判日、７、戦争犯罪人面々、８、裁判場光景

　第７号〜朝聨第７回中央委員会（東京）／朝聨学院第２回卒業式（東京）／千葉県婦女部結成大会（千葉）／朝聨青年運動大会（東京）／レスリング大会（大阪）／解放闘士慰霊祭（三多摩）／解放闘士追悼会（東京）

　第８号〜敗戦１周年日本の表情（東京）／労農大会（東京）／朝鮮解放１周年記念祝賀大会（全国）（東京、大阪、千葉、浦和、横浜、京都、神戸、北海道）

　第９号〜第１回米ソ共同委員会／３．１学院第２回卒業式／神奈川民主青年同盟結成大会／国鉄ゼネスト

　第１０号〜ゼネストの波濤高い日本／日本の財閥解体／生活権を擁護しよう（東京、大阪）／カメラで見た稲の花／第３回朝聨全国大会

　第１１号〜生活権擁護闘争着々と進む／日本国憲法公布／朝聯埼玉県本部委員長葬儀／明日を担当する在日朝鮮人の若人たち／婦女同盟大阪支部結成大会／朝聯学院第３回卒業式

　第１２号（不明）

　第１３号〜着々進歩する建設戦／朝聯の集会模様／民青三多摩本部結成大会／民青全国結成大会／荒川朝鮮朝聯初等学院自治会／３．１運動２８周年記念大会（大会とデモ行進、東京、愛知、大阪など）

ソウルの出張所でも好評

　朝聨の会議録などには、映画作りに関して意見を交わしていたことが記されている。例えば、バックミュージックの曲目選定が良くない（第１０回中央委員会）、劇映画、文化教育映画、ニュース映画の３種を適切に選択して本部、支部の要求に応じるよう努力する（第１１回中央委員会）など。日本全国にわたって、また運動の全貌をくまなく撮影したとはいえないが、戦後の混乱期に撮影と録音機材を持って各地の活動を回って撮った人たち、上映して回った人たちの労苦が想像できよう。

　「朝聯ニュース」は、ソウルの朝聯出張所が「在日本同胞消息を聞く夜」などで上映し好評であったという。しかし１．２報が悪用され問題になったことがある。朝鮮極東映画社がそのフィルムを入手し、反動的に利用したのだ。朝聯は、それを発見して本国派遣員（第２次）にただちに中止するように活動することを命じた（第２回文化部長会議録）。（呉圭祥、在日朝鮮人歴史研究所研究部長）

［朝鮮新報 2006.8.11］