〈強制連行犠牲者の遺骨問題〉 「アジアとの関係再構築の入り口」 |
民間運動が政府動かす 強制連行犠牲者の遺骨問題に関する集会が日本各地で行われている。日本の市民団体と宗教団体、民族団体が力を合わせて取り組んできた運動の波が着々と広がっている。 各地で遺骨みつかる
これまで、民間の調査団体や市民団体は自治体への要請や、埋火葬許可証などの資料調査、強制連行があった現場周辺での聞き取り調査を通じて多くの遺骨をみつけ、問題への関心を呼び起こしてきた。 朝・日の有志らによる朝鮮人強制連行真相調査団は、昨年ホットライン開設や調査票の送付、聞き取り調査などを通じて、埼玉、東京、神奈川、千葉、愛知、大阪、兵庫などで新たに遺骨をみつけだした。 山口では、強制連行された朝鮮人130数人が水没事故で犠牲となった長生炭鉱で、当時労働監督を行っていた日本人が初めて謝罪とともに貴重な証言を行った。九州では行政の職員が納骨堂や資料を保管する倉庫を探して調査に積極的に協力した。 2003年に結成された「強制連行、強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム」は、市民団体、宗教団体、民族団体が共同で取り組むモデルケースとなった。結成以来、道内各地で多くの遺骨や犠牲者の手がかりをみつけた。また、遺族を探し出し遺骨との対面に尽力してきた。18日からは大規模な発掘調査も行う。 仏教界が着手
仏教界の取り組みは遺骨問題解決に大きな影響力を持つ。数十年間遺骨を預かり供養を続けていた寺院なども多く、「遺族の了承なく遺骨を無断で扱ってはいけない」「遺骨になった経緯や真実を明らかにしなければならない」といった多くの僧侶らの良識が、遺骨問題における「共通認識」を広めるうえで大きな役割を担ってきたからだ。 集会の全国実行委員会にも名を連ねる曹洞宗は、「単なる調査のための調査ではなく、人権問題として、本宗の戦争責任問題への取り組みの一環」(曹洞宗人権擁護推進本部)として遺骨調査に取り組んでいる。 曹洞宗は、日本政府からの調査依頼をさらに主体的に、宗教的に受けとめ調査に取り組んだ。昨年11月から二度にわたって同宗寺院全体に調査依頼を送付。6月末までに1643件の回答が寄せられ70カ所で遺骨などに関する手がかりが見つかったという。現在、聞き取り調査などを行っている。 さらに、真宗大谷派(東本願寺)と浄土真宗本願寺派(西本願寺)も調査に着手する方針を明らかにしている。傘下寺院に調査票を送り、それに基づいて聞き取り調査などを行う。 3宗派の末寺の合計は日本国内の寺院の約4割、全日本仏教会傘下としては半数以上の3万600カ寺にのぼる。 国会でも論議 日本政府は、南朝鮮政府との合同の実地調査を一方的に無期延期し、全国集会参加予定だった朝鮮の遺族の入国を拒否した。しかし、全国集会の開始を前後して態度を少しずつあらためている。一度は突っぱねた全国実行委員会と南の遺族らとの交渉にも応じる構えを見せ、合同実地調査も7日に実施した。 東京集会で基調報告を行った上杉聰・全国実行委員会共同代表は「日本政府が民間の運動としっかり協力して調査を進める関係を築いていくことで成果は大きくなる。アジアと日本の関係を再構築する入り口となるこの問題を心から大切にしよう」と呼びかけた。 日本国会内でも動きがある。審議には至らなかったものの、超党派の国会議員で構成する「恒久平和のために真相究明法の成立を目指す議員連盟」が中心となり、日本による強制連行や戦争被害の実態を明らかにするための「恒久平和局設置法案」が提出された。国会での質疑でも取り上げられ、関心を呼び起こした。 日本政府が遺骨調査に着手して1年以上が経過した。この間、調査不備が再三指摘されるなど、日本政府の不誠実さがたびたび問題となっていた。 しかし、「誠実な調査」「真摯な取り組み」への下地は民間の力によってすでに整えられた。あとは日本政府がまっすぐ歩を進めればいい。その第一歩は、遺族に頭を下げ訴えに耳を傾けることだ。(取材班) [朝鮮新報 2006.8.8] |