〈広げよう 民族結婚の輪〉 揺らぐ「民族結婚観」 |
同胞社会の発展に直結する問題 少子化、高齢化、核家族化、晩婚化、そして国際結婚…社会の存続に警鐘が鳴らされている。だがこれは日本社会だけのことではない。在日同胞社会もまた、同様の問題に直面している。多様化する価値観の中で「民族結婚観」は揺らいでいる。 お嫁さんになりたい?
「そもそも結婚に対する願望自体が薄れている」 総聯東京・大田支部の林柱烈委員長は同胞社会の最前線から冷静に分析する。「一人でも、生きていこうとすれば生きていける日本社会では『結婚』『家庭』『幸福』がイコールにならなくなってきている」。 そのせいか未婚の青年たちは結婚に対するばく然とした「不安」を「負担」に置き換える傾向にある。「まだいい」「めんどうくさい」「もう少し自由でいたい」と。不安定な社会環境、財政状況も関係している。これは同胞青年とて例外ではない。こんにち、「大きくなったらお嫁さんになりたい」は「夢」として存在しえない。 さらに帰化、少子化、晩婚化、国際結婚の波。これらは非情な数字に表れる。 例えば、大田区には約3900人の同胞が暮しているが、うち25〜40歳は約1240人、これに対し0〜19歳は約460人しかいない(朝鮮、韓国籍の外国人登録者、05年4月現在)。 埼玉の西部地域でも似たような状況だ。 西部支部の李勝信委員長は、現在の青年たちについて「あらゆる意味での国際化が進んでいる。国際結婚を選択肢として望まなくても除外することはない」と話す。 両親の目線からも、民族結婚は「絶対に」から「できれば」にシフトしつつある。 突破口は20代後半の女性
出会う機会、対象の多くが同胞同士とはかぎらない中で、民族結婚を望むことは無理なことなのだろうか。 両地域の委員長は頭を悩ませながらも、現状を深く理解しているからこそ、目を背けない。同胞社会の発展に直結する問題でもある。民族結婚を運動の中心課題に据え、出会いの場がないのなら出会いの場を作ればいいと、支部独自の活動として食事会を計画したり、「結婚相談所」へのあっ旋をするほか、直接お見合いを取り持って民族結婚のために何ができるかを実践している。 西部支部では今年に入り、すでに4件のお見合いを仲介している。結果こそまだ出ていないが、地道な努力は芽を出しつつある。今年は民族結婚が例年の2倍成就している。 少子化が進み民族結婚が減少することは、民族教育を受ける子どもたちの減少につながり、同胞社会も縮小する。 この危機的状況に林委員長は警鐘を鳴らしながら、「しかし、民族心自体が消えているわけではない。その証拠に民族結婚を望む青年は多い」とし、突破口を20代後半からの同胞女性に見出そうとしている。「問題は朝青を卒業した独身女性たちの受け皿がないこと。早急に解決する必要がある」。 李委員長は各地域の情報交換の重要性を説きながら、同胞の祝福のなかで行われる民族結婚のすばらしさを強調する。「200人、300人の(同胞の)祝福を受ける結婚式がどれほどの幸福感を得られるか想像してみてほしい」。 [朝鮮新報 2006.7.5] |