〈第4回 強制連行、強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム〉 60年ぶり 甥が遺骨と対面 「元気だったサムチョンが・・・」 |
第4回「強制連行、強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム」が2月19日、西本願寺札幌別院本堂(北海道札幌市)で行われた。「歴史を踏まえて、東アジアに真の和解を」をテーマに行われた今回のフォーラムには、南朝鮮から強制連行犠牲者の遺族である趙榮奎さんと「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」のメンバー、「親日反民族行為真相究明委員会」の姜萬吉委員長、歌手の鄭泰春さんらが招かれ、総連、民団同胞、道内外の学者、研究者、市民ら250余人が参加した。 正式な謝罪と補償を
南朝鮮から来た遺族の趙榮奎さん(76)は17日、フォーラムに先立ち、叔父の遺骨が安置されている北海道・赤平の宝性寺を訪れ遺骨と対面した。趙さんは流れる涙を拭おうともせず、「サムチョン(叔父さん)!」と呼び続けた。 榮奎さんは、「60数年前には元気なサムチョンにあいさつしたのに、今では白骨と化したサムチョンにあいさつしなければならないとは、胸が張り裂ける想いだ」と悲しみを吐露した。 榮奎さんの叔父、趙龍文さんは1940年ごろ徴用され、赤平の北炭赤間炭鉱の坑内運搬員として働かされ、45年10月に病死した。遺骨(創氏改名によって「安川龍文」)は、赤平の炭鉱における強制連行や強制労働の実態調査を進めてきた赤平高等学校の石村弘教諭と生徒たちが、フィールドワークで宝性寺を訪れた際に偶然みつけた。 赤平市役所が開示した「埋火葬認可証」から龍文さんの本籍地を探し出した石村さんは、同フォーラムに調査を依頼。南朝鮮の「強制動員被害真相究明委」を通じて、甥の榮奎さんの所在が確認された。 住職や赤平高校の教師、生徒らに謝意を表した榮奎さんは「(遺骨の問題は)単に個人の問題ではなく、国家間の問題。日本政府の正式な謝罪と補償がなされないかぎり、遺骨は引き取れない」として、日本政府に対して誠実な対応を求めた。 過去認識、子どもたちに 鄭泰春氏の歌「徴用者アリラン」で始まった第4回フォーラムでは、鄭氏が数日前に京畿道平澤市で行われた「反米軍基地集会」に参加した事実に触れ、「この地から戦争をなくすためには、武器をなくし、基地をなくし、そして誤った過去から学ぶべきだ」とあいさつした。 つづいて、同フォーラムの殿平善彦共同代表がフォーラム年次活動について報告。札幌別院の山内教嶺輪番が同別院の遺骨問題解決のための本山との取り組みなどを紹介し、早期解決を目指す決意を語った。 遺族の榮奎さんとともに登壇した石村教諭は、「過去を見つめなおすことの重要性を、子どもたちに教えることによって、その意義がより増す」と強調。同じく登壇した赤平高校郷土史研究会の生徒らも、「自分の生まれ育った町で何が起きて、何が解決されないでいるのかを知ることは大切」だと語った。 遺骨発掘は未来への一歩
「戦後60年と東アジア共同体への道」について記念講演を行った「親日反民族行為真相究明委」の姜萬吉委員長は、朝鮮半島の分断に至る経緯を米国と日本の関わりから歴史的に分析したうえで、「東アジアにおける共同体の構築は、朝鮮半島の統一へ向けた和解と協力、米国の干渉の排除、日本の真摯な過去清算が実現されなければならない」と指摘した。 同フォーラムの蔡鴻哲共同代表は、昨年10月に行った旧日本陸軍浅茅野飛行場建設工事犠牲者の遺骨発掘(本紙2005年11月30日付既報)について報告した。 蔡共同代表は、「過去を掘りおこすこと、遺骨を掘りおこすことは、未来を切り開く第一歩であると信じている。過去清算問題は、日本政府の責任を明らかにして謝罪と補償を実現するとともに、在日同胞社会のルーツにも関わる問題だ」と強調。今夏に予定している、100人以上の在日と南の同胞、日本人青年たちによる本格的な発掘作業への積極的な賛同を呼びかけた。 今年で4回目を迎えた北海道フォーラムは、会場を埋め尽くした多くの参加者らの活発な討議などの熱気で、いまだ降り積もる北国の雪をも溶かす勢いだった。【強制連行、強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム】 [朝鮮新報 2006.3.9] |