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祖国への修学旅行

 高校3年生の息子が祖国訪問の修学旅行に出かけた。わが家ではすでに上2人が祖国訪問の経験者なので荷造りも慣れたもの。しかし、本人は出発前から興奮状態。当日も船から実況中継メールを送って来たほどだった。

 いつもにぎやかな末っ子が2週間近くもいないと物足りない気がしないでもないが、部活のあの山のような洗濯物がなかったのはうれしいかぎりだった。2週間はあっと言う間に過ぎ、無事帰着。案の定、息子の興奮は想像以上だった。姉兄のときと自分とを比べながら「楽しかった」と満足げ。できあがった写真のどれを見ても、 本当に楽しそうだった。

 勉強をしに行くと言うよりは、部活命! のような高校生活。おかげで無遅刻無欠席はありがたいが、耳にはMDのイヤホン、ポケットには携帯、家の近くになるとネクタイを緩め、コンビニで買ったパンをかじりながら、時にはその手にマンガ本。「何をしてるのかなわが家の坊ちゃんは」と、心配の尽きぬ毎日だった。しかしそんな息子が祖国での親せきとの初対面、滞在中生活を共にした指導員の先生との別れを経験して、ちょっぴり成長した気もする。

 自分の目と身体で感じた祖国の空と空気、板門店での言葉にできない緊張感。元山の港では、別れが辛くてみんなで号泣したと言う。興奮や感動は一時のもの。はたして在日4世の息子に、祖国はどう映り、何を感じさせたのだろうか…。

 あとわずかな高校生活だが、その答えはじっくりゆっくり出してほしいと思った。(李清淑、会社員)(今週から筆者交代します)     

[朝鮮新報 2005.7.4]