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「ハルベ」の死

 「ハルベ」が亡くなった。息子と娘が葬式に出席するためには学校を早退しなければならない。

 「え、おじいちゃんの葬式は休んだことにならないんだよ。先生が言ってたよ」

 息子の言葉に、彼が勘違いしていることに気がついた。

 「ハルベ」はハルベでも血のつながりは全くない「ハルベ」だ。総連の県本部委員長で、うちへは車で3時間ほどかけて来る。元気な頃は月に1度はうちへ来て食事をして帰っていった。

 わが家の長男は数年前まで変なクセがあり、他人の耳たぶをいじるのが好きだった。放っておくと、1時間でも2時間でもいじりたおす。オンマである私はくすぐったくて耐えられず、アッパは忙しく不在気味とあり、「ハルベ」の来る日は息子にとって「耳たぶの来る日」のようでもあった。

 「ハルベ」のひざを占領し、耳たぶを触りだす息子は飴玉やお小遣いを見せても離れようとしなかった。

 「ハルベ」は祖国にいる息子や孫を想っていたのかもしれない。されるがままに身をまかせて、目を細めながらその姿を見ていた。息子が実の祖父と思い込むのも無理もない。そして、その「ハルベ」が亡くなったのだ。

 (父親の話では)通夜で彼は目に涙をいっぱいためて、人が握らせてくれたお菓子やお寿司も喉を通らなかったらしい。

 お葬式で彼は言った。「オモニ、ハルベはもう熱がないからしんどくないね。痛くないね。もう会えないからさみしいけど、ハルベはしんどくないね」。

 「ハルベ」は彼をまたひとつ大人にしてくれた。(李命淑、主婦)

[朝鮮新報 2005.6.20]