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美しい言葉

 ナターシャ・グジー、チェルノブイリ出身の可憐なシンガー。竪琴のような民族楽器バンドゥーラを奏で、透き通る声でウクライナや日本の名曲を歌う。

 19年前、世界を震え上がらせた原発事故で被爆。故郷を失い、友と肉親を失い、生まれては死んでいく子供たちを見てきたナターシャの鎮魂歌は、聴く者の心の扉を開き静かに染み入ってくる。

 この清水のように澄んだ言葉を、人は求めていたのだ。それほど私たちを取りまく社会は、無知とごう慢、多数派による偏狭な言葉にすさんでいる。

 このコンサートに注がれた、多くの人々の誠意と祈り。ゲストの日本の民族楽器グループとの共演「涙そうそう」は、そんな人の真心が共感を呼び覚まし、さざ波のように世界に広がってゆく優しさに満ちていた。

 今、権力の側に立つ人々に煽られ、私たちは誤解と誹謗の的になり、日本とアジア被害国の侵略と戦後の記憶は深い溝を穿たれようとしている。心ない言葉に傷つき、抗議してまた傷つき、今度こそこの国はもう終わりかも知れない、と何度思っただろう。

 けれど、真実の祈りを受け止める人々の真心がこの国にある限り、いつか私たちの言葉は届くのだと信じたい。

 希望の灯が消えませんように
 大地が喜びとともにありますように
 心は悲しみを越えていきますように
 あたたかい心が人々をひとつに結びつけますように
 (作詞作曲N・グジー「希望の灯」より)(金蓉子、団体職員)

[朝鮮新報 2005.5.30]