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「オンマ」から「オモニ」へ

 その日は突然やってきた。今まで私のことを「オンマ」と呼んでいた息子(小3)が「オモニ」と呼んできた。「オモニ、ごはんまだ?」と。

 初めて子どもを産んで8年間、これまで目の当たりにしてきた子どもの成長の瞬間は数知れない。子どもが初めて微笑んだとき、物を持ったとき、立って歩いたとき。そのたびに喜び、騒ぎ、実家にまで電話をした。

 ところが今回ばかりはいつもと違う。

 ビックリしたというよりパニックに近いものがある。嬉しいというより寂しい感じすらする。そして、そういう自分にうろたえている。

 息子が小学校に入学した頃、「そろそろ、アボジ、オモニと呼んでもいいんじゃない?」と言ったことはあった。息子は「そうだね」と軽く答えたものの照れてしまい、結局「オモニ」とは呼べなかったし、私も無理強いはしなかった。そしてそのことは忘れていた。

 ところがその後の2年間、彼の頭の中では何が起きていたのだろう。夫もいきなり「アボジ」と呼ばれて、子どもの前では平静を装ってはいたが、仕事場で「おい、一体何があったんだ?」と私に問いただす始末。今では長女(小2)までもが「アボジ、オモニ」と呼ぶ。

 呼ぶ方も呼ばれる方もまだぎこちない。

 これに馴れるまで、そう時間はかからないだろう。今はとりあえずこのぎこちなさを楽しんでおこう。わが子の成長を楽しまなくては、と自分に言い聞かせる。しかし、末娘(3歳)に「オンマー」と呼ばれたとき、なぜかホッとしてしまった。(李命淑、主婦)

[朝鮮新報 2005.5.23]