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春の宴

 満開の桜に彩られた日曜日の公園で、分会の花見が催された。

 明日から花散らしの雨になるというこの日、艶やかなしだれ桜とソメイヨシノが溶け合って、早春の公園は夢のような美しさだった。

 「こんなにきれいな桜の下でお花見なんて、きっと何十年に一回の最高の経験だね」と、ニョメン分会長がしみじみと言った。

 宴もたけなわ、民謡に合わせてオッケチュムが出ると、すかさずチャンゴの音が響き渡る。にぎやかな拍子に、周囲の人々がふり返る。

 すると、赤い顔の男性が一人、また一人とやってきて、親しげに話しかけてきた。

 「ぼく、ハングル勉強してるんですよ」「チョゴリの女の子、よく見ます」

 ほかのおばさんもやってきて、そばで見よう見まねで踊っている。チャンゴの手ほどきを受ける女性、遠くから笑顔で見ている人たち。最後は桜吹雪の舞う中で、みんな一緒に踊った。

 「ありがとうございました。また来年もよろしく」

 桜の美しさに魅せられたか、ほろ酔い気分の解放感か。ひょいと垣根を越えたつかの間の出来事。

 日本と南北朝鮮、中国と、荒れ模様が続く東アジアの春だが、嵐が異国のマイノリティーを直撃するのはいずこも同じ。

 人間たちの喧騒とは無縁の美しい花の下で、何の差別もそしりもなく、躊躇もなく、心のままにそれぞれの文化で興じることのできる日が訪れることを祈るばかりだ。ただ夢のように美しい桜の、あの春の日のように。(金蓉子、団体職員)

[朝鮮新報 2005.4.25]