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夏のパンプキンスープ

 4月、子ども達は5年生と2年生に進級する。 仕事と子育ての10年も、節目を迎えた。多くの人に助けられここまでやってきたが、中でも忘れられない人がいる。

 10年前の7月、娘を里帰り出産して東京に戻ったが、保育園は見込めず、相談に行った区の窓口で保育ママさんを紹介された。区立保育園に20年以上勤め、8月から自宅で保育を始めるという。

 夏の暑い陽ざしの中、ベビーカーを押して訪ねた私は、手入れの行き届いた部屋に通され、冷たいスープを勧められた。

 「暑い中、大変だったでしょ。召し上がって」。冷たいパンプキンスープは、熱くほてった私の喉を甘く潤し、私は癒されていた。

 彼女の元で娘はのびのびと成長し、私は娘とママさんの笑顔に支えられてひた走った。初めての発熱、下痢や夜泣き、子どもとの接し方まで、親身になって相談に乗ってくれた。娘がひどい下痢でどうしても抜けられない仕事があった時も、何度もオムツを替えながら私の帰りを待っていてくれた。朝・日関係や「慰安婦」問題にも関心を寄せ、集会にも参加してくれた。

 翌年の4月、区立保育園に移る時、ママさんとの別れが辛かったのは娘ではなく私だった。

 彼女とは、今も便りを交わす。普段は保育士、土日は社会奉仕や平和集会に。還暦を過ぎてなお前進し続ける彼女からの手紙は、弱い人々への愛と、権力への怒りに満ちている。

 女性が母として一人の社会的存在として生きる姿を見せてくれた。

 あの夏の日の、ひんやり甘い記憶は今も私を癒し、後押ししてくれる。(金蓉子、団体職員)

[朝鮮新報 2005.3.28]