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「チョーセンの切手」

 「オンマ、チョーセンて切手あるん?」

 月刊イオの「切手特集」を見て言った、息子(小2)の一言である。

 「うわぁ、きれいやねぇ。お花とか、蝶とか、キムチの切手まであるよ。チョーセンにもきれいなもんが、あるんやねぇ」

 日本学校へ通い、朝鮮人との接触がほとんどなく、テレビでの報道が「チョーセン」の知識の大部分である彼にはカルチャーショックだったようだ。さて、一端の切手コレクターを気取る息子はその日以来、「チョーセン」の切手に焦がれるようになった。普段はおねだりをしない息子の「欲しいなー。1枚でいいんだけれど…」の言葉に私は動かされてしまった。が、こんな鹿児島の片田舎では朝鮮人も少なく、探すすべもなかった。数十年前、私が初級部生の頃、父に見せてもらったのを思い出し、せめて一目見るだけでもと思ったが、父はとうの昔に誰かにあげてしまったという。

 息子にどう言ってあきらめさせようかと思い始めた頃、息子が「ハルベ」と呼んで慕う同胞の方が親せきの手紙についていた切手を送ってくださった。それは蝶でもキムチの絵でもない地味なものだったが息子は大満足で、その後数日間は布団にまで持ち込み、ニンマリしながら寝た。

 ところが数日後、テレビの某鑑定番組を見ていた息子の一言、「オンマ、チョーセンのお茶碗て、きれいだねぇ。このブルーみたいなグリーンみたいな…、きれいだねぇ。すごいねぇ」「そりゃそうよ、日本に焼き物を教えたのは朝鮮人だし、値段も数百万、数千万とか…」。息子よ、それは無理です…、絶対。(鹿児島在住、主婦、李命淑)

[朝鮮新報 2005.1.17]