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「パッチギ!」−「理不尽さを射る真実」

 久々に日本映画を観て感動した。「パッチギ!」である。舞台は68年の京都。けんかと淡い恋の熱い青春の日々を描く。60年代半ばから70年代初めの日本は、東京オリンピックを成功させ、高度成長期に入っていた。集団就職列車が走り、地方の労働力がひたすら都会へと向かった時代。フォークソングやグループサウンズの全盛期で、日本の若者は将来への夢を燃やしていた。

 そうした社会の中で、民族や国籍の厚い差別の壁に阻まれて、行き場のない怒りと鬱屈を抱えていた在日同胞や青年たち。いまは昔の話のように思える、朝鮮学校生の日本の大学への進学の困難さ、インターハイはじめ各種選手権への出場も認められない。年金もなく、公的住宅への入居も適わなかった。

 しかし、「パッチギ!」に描かれる朝高生たちには、暗さは微塵もない。ちょうど人気番組「ごくせん」のヤンクミのように、義理人情に厚く、けんかも強い。その破天荒な姿にスカッとする。井筒監督のディティールの確かさ。そして、何より、窮屈で理不尽な世の中に反抗する若者たちへの熱い共感が溢れでて、観客の胸を揺さぶるのだ。

 涙が止まらないのは日本の不良グループとの乱闘で命を落とした朝高生の通夜の席。1世同胞が主人公・康介に「お前なんにも知らんやろ」と、植民地支配や強制連行の歴史への怒りと悲しみを突きつける。井筒監督が全身全霊を込めて撮った場面に違いない。「日本が周りの国にどんなひどいことをしてきたか、知らなきゃ本当の友達にはなれない。無知は罪ですよ」(朝日新聞2月9日付)の言葉が「今」の問題点を鋭く射る。(粉)

[朝鮮新報 2005.4.11]