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ジャーナリストの立花隆氏が書いた「政治と情念−権力、カネ、女」(文春文庫)がおもしろい。当初、単行本として刊行された「『田中真紀子』研究」を文庫化したものだが、田中角栄元首相とその娘、田中真紀子元外相の比較は、読んでいてなるほどと思うことばかりだ。単なる政治の話にとどまらず、社会を生きていくうえで教訓にすべき話が満載だ ▼この本の中で立花氏はこう語っている。「…政治の本質は利害の調整にあります。ですから、政治力というのは、言葉を換えていえば、妥協しがたい立場に立つ対立者間に、妥協を作りだす能力(合意形成能力)ということです。それに必要なのは、妥協点を見つけ出す能力(いわゆる落としどころを見抜く能力)であり、当事者双方に、それをのませる能力です…」 ▼田中角栄という人はこの能力に非常に長けていたそうだ。だからこそ、あれだけのアクの強さを持ちながらも、求心力があったのだろう ▼さて話は外交へ。6者会談が12日から始まる週に再開される模様だ。7月末から8月初にかけて行われた第1ラウンドを経て、今回は第2ラウンドとなる。いったん始まれば進展を期待したい。とはいえ、そのためには「利害の調整」が必要だ。朝鮮には朝鮮の、米国には米国の言い分がある。その妥協点をどこで見出すのか。その政治力が、今回の会談を成功に導くか否かを図る一つの要素になるかもしれない ▼「落としどころ」を見つけるためにも、互いに信頼関係を構築することが大切だ。少なくとも会談前に相手が嫌がることをしてはなるまい。(聖) [朝鮮新報 2005.9.1] |