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春・夏・秋・冬

 一人の在日の落語家がいま、南朝鮮で脚光を浴びている。笑福亭銀瓶さん(37)。神戸市生まれの在日3世である。本名沈鐘一。来月23日、ソウルの同徳女子大で初の落語公演を行う。「動物園」という落語をウリマルで披露するのだ。この「動物園」、かつて桂枝雀が英語版を米国で公演したことでも有名な作品だという

▼銀瓶さんは以前、本紙インタビューに答えてくれたことがある。それによると、初めて「ウリマル落語」を披露したのは大阪朝高の生徒たちの前だった。公演の際、「君たちの祖国はどこ?」と聞くと、迷わず「朝鮮」という答えが返ってきたという。その答えに自然に涙したそうだ。そこには、「朝鮮半島が自分の『祖国』だと胸を張って言いたい」との思いがあった

▼今回のソウル公演は、同徳大での日本語授業の一環として行われるもの。ウリマル落語「動物園」「ときうどん」など2編の落語を披露するという

▼ソウルでの公演のため、現在ウリマルの発音練習に余念がないという銀瓶さんは、4年前から独学で勉強を始めた。それが、いまではウリマルで落語をするまでになった。「落語の面白さを日本語だけでなく、ウリマルでも伝えたい」と銀瓶さんはインタビューで答えている

▼「韓流」で日本にも映画や小説、テレビドラマなど朝鮮半島の文化が多く伝えられている。逆に、日本の文化が朝鮮半島に伝えられる。文化の交流が活発になることは決して悪くはあるまい。その伝える役割を在日が果たすということに、さまざまな思いが去来する。(聖)

[朝鮮新報 2005.8.27]